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天皇制「単一王朝」はなぜ126代も続いているのか

榊原英資 (財)インド経済研究所理事長、エコノミスト

 今上天皇徳仁は第126代天皇。外国では王朝がしばしば変わり、日本のように、国家元首(あるいは象徴)が126代も続いた例はない。例えばイギリスでは約1000年にわたって九つの王朝が成立している。現在の王朝は「ウインザー朝・ハノーヴァー朝」。ハノーヴァー朝で最も有名なのがヴィクトリア女王。ヴィクトリア女王の時代、イギリスは産業革命に成功し、外国との戦争でも連戦連勝「大英帝国」の礎を築いたのがこの時代だった。

めまぐるしく変わった英国の王朝

 王朝が次々と変わるのは当事者が戦いによって次々と変わったからである。10世紀以前イギリスはアングロ・サクソンが七つの王朝を築いていたが、そこにノルマン人が侵攻、ノルマン朝が開かれた。いわゆる「ノルマン・コンクエスト」だ。1154年にはヘンリー2世が即位し、プランタジネット朝が誕生。1485年まで続くが、同年ヘンリー7世が即位し、テューダー朝が誕生し、1553年エドワード6世まで続く。その年、メアリー1世が即位。

 そして、1558年にはエリザベス1世が即位、1603年までの45年間務めている。1603年にはステュアート朝が誕生。ジェームス1世が即位し、1625年まで務めている。その後、オリバー・クロンウェルなどの共和制を経て、ステュアート朝が復帰。チャールズ2世が1649年から85年まで36年間務める。ステュアート朝最後の君主はアン女王。1702年から14年まで12年間君臨している。

 アン女王の後はハノーヴァー朝に移り、ジョージ1世が即位、1727年まで13年統治。ハノーヴァー朝最後の君主が前述したヴィクトリア女王、その後、ザクセン=コーブルク=ゴータ朝に移り、1917年以降ウインザー朝に交代している。現在のチャールズ3世はウインザー朝の君主である。

「饗宴(きょう・えん)の儀」で、英国のチャールズ皇太子とあいさつを交わす天皇、皇后両陛下=2019年10月22日午後8時15分ごろ、皇居・宮殿、宮内庁提供即位の礼の「饗宴(きょう・えん)の儀」で、英国のチャールズ皇太子(当時、現国王)とあいさつを交わす天皇、皇后ご夫妻=2019年10月22日、皇居・宮殿、宮内庁提供

政治権力を持たない「象徴」天皇

 王朝の変遷は当然イギリスとヨーロッパ大陸の権力闘争の結果として生じてきた。こうした、王朝の変遷に比べると、日本で126代にわたって天皇制が続いてきたのは不思議なことであると言える。

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