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「ウルトラQ」なんか大嫌いだった――ナメゴンとゴーガとリヴァイアサンと

近藤康太郎 朝日新聞西部本社編集委員兼天草支局長

 「ウルトラシリーズ」ブームのまっただ中の時代にハナタラシだった筆者は、ご多分に漏れず、セブンまでは熱狂的ファンだった。しかし、「ウルトラQ」への思い入れは、ほとんどない。貧家でテレビがなく、初回放送時は見ていなかったということもある。だが、再放送で見ても、ウルトラマンを見た後のガキの目には、地味、というより、異常に怖く映った。見ていられなかったのだ。

 だって、ナメゴンですよ。ナメクジの巨大怪獣ですよ。いまだに庭先でナメクジを見ると体が硬直して、一瞬金縛りになるというのに、体長50メートルのナメクジが画面いっぱいにウネウネはい回る絵なんて、正視できないよ。『ノルウェイの森』に、でっかいナメクジを飲み下す場面が出てくるが、あそこを読んで、しばらくのあいだ食事がまずくて仕方なかったのを思い出す(村上春樹はナメクジの大群のエッセイも書いている。好きなのか?)。

 よく知られたカネ食い怪獣カネゴンみたいに、三丁目の夕日的な、ほのぼの牧歌的な話もあるにはあるが、基本的には、巨大で凶悪な怪獣を、人間の英知と機転で退治するという筋立てだった。ここが、怖かったのだ。だって、あんなでかい怪獣を、人間なんかが倒せるわけないじゃないか。ドラマの最終盤、いつまでたってもウルトラマンもウルトラセブンも出てこない。スーパーヒーローが現れないで怪獣退治だなんて、リアリティーがない! うそっぽいぞ。子供だましかTBS?

 ……と感じていたようなのだ。

 スーパーヒーローが出てこないからリアリティーがないとは、倒錯した論理だな。さすがハナタラシと最近まで思っていたが、ここのところのウルトラQ再評価ブームでいくつかDVDで見直し

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