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新聞の「映画面」をもっと活性化させるために

お金を払っても読みたい筆者を

古賀太 日本大学芸術学部映画学科教授(映画史、映像/アートマネジメント)

 1989年に公開された『ベルリン・天使の詩』が日比谷のシャンテで30週も公開され、さらに有楽シネマで30週続いたロングランの起爆剤になったのは、『朝日』の「天声人語」の記事だった、というのを配給したフランス映画社の柴田駿氏から聞いたことがある。

 「1980年代までは、『朝日』の夕刊に映画評が載ると、その日の夕方から客足が2割伸びた」というのは年配の複数の映画関係者が私に語った話である。

201410月5日の「朝日」映画面。右に「フューリー」の企画広告、左下に「ゴーン・ガール」の広告2014年10月5日付の「朝日」映画面。右に「フューリー」の企画広告、左下に「ゴーン・ガール」の広告
  今も新聞には「映画評」がある。しかし配給会社に聞くと、「影響があるのかどうかわからない」という声が多い。「社会面や生活面の方が効く」「企画広告でインタビューを載せた方が効果がある」とも。

 世界的に活字離れ、新聞離れが進む現在において、はたして新聞の「映画評」の意味はあるのかどうか。そもそも各紙の映画評はどうなっているのか。ここでは「新聞の映画評」評を試みてみたい。

 現在、新聞(全国紙)の映画評は毎週金曜日の夕刊に載る(産経は朝刊)。しかし中身は新聞によってばらつきがある。

 まず筆者で言うと、外部筆者中心なのが『日経』と『朝日』。基本は記者が書き、記者OB1名を加えているのが読売。外部と記者を半々にしているのが毎日。

 『朝日』は高齢の外部筆者が多い。秦早穂子、佐藤忠男、山根貞男、秋山登といった70代から80代の大御所が健在で活躍している。最近では森直人、北小路隆志、暉峻創三といった40代、50代も加わったが。これにたまに石飛徳樹編集委員が書く。

 『日経』は中条省平、村山匡一郎、宇田川幸洋、渡辺祥子といった50代から60代の書き手に、古賀重樹編集委員が時々書く。全体的に言うと、朝日よりも刺激的な文章が多いし、映画のセレクションがいい。とりわけ中条省平と宇田川幸洋の文章は楽しみだ。

 『読売』は、OB記者の土屋好生以外は現役記者で、福永聖二編集委員、小梶勝男、恩田泰子などが書く。そのぶん内容はいわゆる記者の文章なので平凡だが、右側のインタビューや情報欄も含めるときちんと見開きで2面取っており(朝日も2面)、週末の公開作を網羅している感じがする。

 『毎日』は、高橋諭治、細谷美香といった外部筆者と勝田知巳、広瀬登といった記者が対等に並ぶという珍しいパターン。さらに1本の映画を複数で論じたり、週末興行成績が毎回載り、大高宏雄がそれを論じたりしている。映画評自体も記者の割には自由に書いている印象を受ける。

 この4紙を比べてどこか一番いいかというと、私は

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