2015年01月13日
以上、長々と述べてきたが、カジノが合法化されれば、日本に現存する「賭博依存症」推計536万人(成人人口の4・8%。2014年の厚労省発表)は減少する、とわたしは予測する。
世界平均で成人人口の1~2%(WHO統計)とされる「賭博依存症」に陥った不幸な人たちが、なぜ日本では5%弱と、ぶっちぎり状態で多数存在するのか?
――日本国民はバカだから、か? いやいや、そんなことはあるまい、とわたしは信ずる。
国連加盟約200か国の中で現在ゲーム賭博を合法化している130か国超の国民たちと同程度に、日本にはバカもいればバカでない人もいる。
そうであるなら、「賭博依存症人口、ぶっちぎり世界一」という不思議な現象には、必ず不思議な原因があるはずなのである。
そしてその不思議な原因とは、本稿でここまで説明してきた、霞が関諸官庁利権の公営競走賭博および警察利権のパチンコ・パチスロの存在だった。これらの合法あるいはグレイ・ゾーンに位置する賭博の形態が、世界でもぶっちぎり状態の多数の「賭博依存症」人口を日本では生んできた。
そもそもWHO(世界保健機関)が、1977年に、「賭博依存症」を意志薄弱・性格未熟によるものではなくて、正式な精神疾患と認定してからおよそ30年間、なにもしてこなかった厚生省および現在では厚生労働省なのだが、それが「カジノ合法化」に関するマスコミでの議論が盛り上がった2014年になって突然、日本には世界基準の数倍の「賭博依存症」人口がありますよ、と発表したあたりから、裏に何かあるのではなかろうか、と疑ってみるのが、おそらく日本国民としての正しい対応であろう。
PTA系の正義を叫ぶ人たち、および朝日新聞を含む「良識派」メディアが、いつもカジノ解禁反対の第一の理由として掲げる「賭博依存症人口が増加する」という主張が、いかに見当外れのものだったか、すこしでもご理解いただけたなら、著者として幸いである。
カジノ解禁反対派の、
――日本にこれ以上、「賭博依存症」の人たちを増やして、どうする。
とする主張は、まったく正しい。
わたしは、この主張を全面的かつ熱烈に支持している。
しかし、日本における「賭博依存症」に陥った不幸な人たちの数を、もしすこしでも減らそうと本気で試みるなら、むしろゲーム賭博の場・カジノを合法化し厳しい監督のもと、(現行のぼったくりではない)よりフェアな賭博環境を提供すべきなのではなかろうか、とわたしは考えるのだ。
間違っているようなら、是非ご指摘いただきたい。
博奕(ばくち)・ギャンブルは人間の歴史とともに古いのではない。歴史以前から存在していた。
ほぼ正六面体となる大型動物の距骨に、記号が刻まれているものが発掘されている。
そんな道具の用途は、ふたつしかあるまい。
ご宣託か博奕か。
歴史が始まると、「勤労意欲を削ぐ」との理由で、為政者たちがどんなに厳しく法律で禁じようとも、ゲーム賭博は連綿と生き残ってきた。
ヒトは、入牢・資産の没収・重労働・流刑、ときとして死罪を覚悟してまで、博奕を打ち続けた。
なぜか?
18世紀から19世紀にかけてのイングランドの作家チャールズ・ラムは、この気の遠くなるように奥深い疑問に、簡潔に答えている。
――人間は賭けをする動物である
からだ、と。
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