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[5]ネット動画とテレビが交わるとき(下)

「つながり」志向に距離を置く蛭子能収さん

太田省一 社会学者

(承前) 

 その蛭子能収さん、同じテレビ東京が開設した無料動画サイト「テレ東プレイ」で、「蛭子能収の一人でできるもん!!」なるネット動画に出演している。

蛭子能収さん蛭子能収さん
 内容はいたってシンプル。67歳になる蛭子さんが、毎回様々なことに一人で挑戦する。テレビの「ガチ」で「ユルい」代表選手の蛭子さんが、ネットにも進出した形だ。

「蛭子能収の一人でできるもん!!」

 どれも蛭子さん好きにはおすすめだが、例えば「『コアラのマーチ500回くらい振ってみる』の巻」では、お菓子の「コアラのマーチ」を未開封のまま500回振ると、箱の中で1個の大きな塊になるという噂を蛭子さんが検証する。

「『コアラのマーチ500回くらい振ってみる』の巻」

 さて結果はいかに、というのがもちろん見所ではあるが、振りながら「一番好きなのは柿ピーで、柿の種はなるべく少ない方がいい。本当の事を言うと、ピーナツだけでいい」と語り出す蛭子さんにも格別な「ユルさ」の味わいがある。

 作りとしてはこの動画、本連載の初回でも触れたユーチューバーの動画と同じである。

 一人で固定カメラに向かい、一人しゃべりで間をつないでいく。“振ってみる"というタイトルもネット動画で定番の「〇〇してみた」を踏襲している。

 考えてみれば、ユーチューバーがくだらないことを大真面目にやるところなどはまさに「ユルさ」と「ガチ」の追求と言えるだろうから、両者が似てしまうのも無理はない。

 しかし、ネット動画と蛭子さんの動画の間に違いがないわけではない。

 それを感じさせるのが、「『僕とハグしませんか?蛭子能収67歳ガチでフリーハグしてみた!』の巻~巣鴨編」というもう一本の動画だ。

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