メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

[3]小谷野敦『ヌエのいた家』に癒やされた

芥川賞落選作品だけど、又吉直樹『火花』よりだんぜん面白い

青木るえか エッセイスト

 又吉直樹さんの『火花』について書いたらたくさんの人が読んでくださったそうで、やはり世間の人は文学や芥川賞に興味があるんだなと思い、続けて芥川賞関連の話を書く(と、書いたけれど、人は文学にも芥川賞にも興味はない。人々は、「又吉さんが芥川賞を取った」ことに興味があるだけだ。それだって、又吉さんが、ではなくて有名人が別ジャンルで何かしでかしたということに人が群がるということだ。克美しげるが殺人で逮捕されて大騒ぎというのと構造は同じ)。

 小谷野敦の『ヌエのいた家』について。

小谷野敦さん小谷野敦さん
 芥川賞にノミネートされて落っこちた作品である(2015年1月)。ああ、又吉さんの話をたくさんの人が読んでくれたというのに、小谷野敦芥川賞落選作品では一挙に読んでくれる人も減るのであろうなあ。

 ただし小説として『火花』より『ヌエのいた家』のほうがだんぜん面白い。でも世間は「小谷野敦の『ヌエのいた家』」では食いついてくれないのである。

 又吉さんが芸能人として、そのへんにいる人とは違うのと同様、小谷野さんという人も、

・・・ログインして読む
(残り:約2457文字/本文:約2925文字)