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つんく♂不在のハロプロはどうなる?

批判していたファンの間にも動揺が……

鈴木京一 朝日新聞文化くらし編集部ラジオ・テレビ担当部長

 がんで声帯摘出に至ったつんく♂の闘病記『「だから、生きる。」』は彼がプロデュースしていたハロー!プロジェクトのファンには涙なくして読めない。ハロプロメンバーに対する歌唱指導のために自身の喉を休める暇がなかったことなど、身を削ってプロデュースに打ち込んでいたことが語られる。

 彼の「ロック観」も興味深い。彼の言葉には何かというと「ロック」が登場し、「ロックか否か」が判断基準となる。

 先日NHKで放映された、つんく♂の現在に密着したドキュメンタリー。彼が食道発声法に取り組んでいることが伝えられたが、その場面を撮ることは拒否された。「ロックな感じがしないから」というその理由に、彼の中での「ロック」という物差しの健在を知り、胸を打たれた。

 本書によれば、「何がロックか」の基準は変わる。

 以前は自身のコンサートに家族が来たり、特売やセールやポイントを気にしたりするのは「ロックちゃうで」と思っていたが、結婚後は一転、家族が見に来るのも、フードコートでラーメン食って、ポイントためるのも「実はロックじゃないか!」と思うようになり、自作詞に「フードコート」が登場するようになったという。食道発声法に取り組む姿を「ロック」と思うときが来るかもしれない。

 この本でファンが注目したのは、彼の闘病ぶりとともに、ハロプロのプロデューサーを降りていたことだ。

校歌を演奏するつんく♂さん=4日、大阪府東大阪市 20150408声帯摘出を公表した母校・近畿大学の入学式で校歌を演奏するつんく♂さん=2015年4月8日
 それも病気が直接の原因ではなく、病気の発覚前の2013年秋、所属事務所・アップフロントグループの会長からの提案によるものだった。「僕としてはまだまだ続ける気も、展望も大アリだった」との文章には口惜しさが伝わってくる。

 公式に明らかにされたのは今回が初めてだが、つんく♂のハロプロ離れの気配は2014年あたりから感じられた。

 ハロプロの諸グループのコンサート冒頭で流されるメンバー紹介のVTRでは、最後に「Produced by つんく♂」の文字がどーん、と登場するのが恒例だった。

 メンバー一人一人の映像で上がる歓声よりは一回り小さな、微妙な歓声が客席から上がるのもお約束。それが道重さゆみのモーニング娘。卒業公演を含め、14年後半あたりから消えていた。今年に入ってからはCDジャケットからも名前が消えていた。

 前後して、つんく♂以外のディレクターらがハロプロについて語る場面が増えてきた。

 これまではハロプロのスポークスマンはもっぱらつんく♂で他のスタッフが表に出てくることはほとんどなかった。しかし2014年あたりから事務所が何本も立ち上げたネット番組や雑誌で、制作の舞台裏を社内のスタッフが語っている。

ハロプロへの貢献をどう見るか

 ハロプロの楽曲の大半を作り続けてきたつんく♂の貢献をどう見るかは意見が分かれる。

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