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[2015年 映画 ベスト5 (1)] 傑作!

何を、どう撮るかに成功した映画

藤崎康 映画評論家、文芸評論家、慶応義塾大学、学習院大学講師

『螺旋銀河』(草野なつか)
 外見も性格も対照的な二人の若い女性が、ラジオドラマの脚本を共作してゆく身辺雑記ふうの物語を、新人監督・草野なつかが細心かつ大胆に描いた傑作。

螺旋銀河『螺旋銀河』
 二人の関係性の変転をつづる鮮明なショット――コインランドリー、ビル街の夜景、会社の屋上、昼下がりの湾岸エリア、駅のホーム、カフェなどの映像――の連続に目を見張る。正直、草野の出現には度肝を抜かれた(2015/10/28、同/11/02の本欄参照)。

『ビッグ・アイズ』(ティム・バートン)
 このところ奇抜な趣向だけが空回りし、やや精彩を欠いていたティム・バートンだが、“小品性”に徹した本作を撮り、映画の勘を取り戻したのでは――。そう思わせるほど、詐欺師的な夫の陰でゴーストぺインターとして生きた実在のマーガレット・キーンの半生が、軽妙な悲喜劇的なタッチでつづられる(下手すれば重くシリアスになってしまう題材だが)。

 1950~60年代アメリカのライフスタイルやアートシーンのつぶさな再現もみごとだ。見終わって、ああ、いい映画だなあと感じ入った(2015/03/10、同/03/11の本欄参照)。

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