私立大学の経営を締め付ける文部行政
2016年12月13日
東大が、一人暮らしをする女子学生のために家賃を補助すると聞いて、ずいぶんのんきな話だなと思った。東大の女子の割合は2割弱というが、それが治安上の理由とはとても思えないからだ。私は私立大学の芸術学部で教えているが、それでもいつも女子は半分はいる。授業料もかなり高い。もし一人暮らしの女子に家賃補助を設けたら、女子は7割くらいになるかもしれないが。
いくつかの報道を読むと、東大は女子寮を廃止する代わりに、大学指定の安全性の高いマンションに入居する女子学生に家賃補助をするらしい。しかし「大学指定」という考え自体が時代遅れではないだろうか。現代だとかえって危険な気もする。女子向けのマンションがないから慶応や早稲田に行くとは考えにくい。
大学の男女の割合の差は、社会や家庭が若者に対して何を期待しているかによる。一般的には一流と言われる大学の法学部や経済学部を出た男性が、日本の官庁や基幹産業の中枢を占めてきた。長い間、日本の役所や大きな会社では女子は「お茶くみ」か「男性の結婚相手」としてしか扱ってこなかった。
例外はマスコミだろうが、そこでも結局は男性支配が圧倒的なのは、電通の過労による自殺事件でも明らかだ。「女子力がない」という上司の言葉が象徴している。
だから今でも文学部や芸術学部を除くと、大学は男子の割合が高い。日本における女性の地位は今年の「ジェンダー・ギャップ指数」によれば世界144カ国で111番目というが、そこを改革しないと東大に行く女子は増えないだろう。つまり女性の首相や議員や知事、あるいは社長や役員などを増やしていくことからしか、始まらない。
今の大学には、そんなことより重要な問題がいくつもある。
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