盗撮を容易にする環境を作ってはならない
2017年04月26日
「男女共用トイレ」にひそむ盗撮の危険性――「男女共同参画」という観点は貫かれるべきなのか
盗撮問題を考える際には、前稿にふれた男性の女性の身体に対する関心の強さ(それが後天的なものであれ先天的なものであれ)を、軽視すべきではない。携帯電話やスマートフォンの普及を背景とした、スカート内の盗撮事件がしばしば報道されるが、また最近、各種の職業人が――学校教員から警察官、医師、看護師、法務教官まで――が、職場の手洗い・更衣室等に盗撮器を仕かけたといった報道を目にするようになった(ちなみに各地の迷惑防止条例による盗撮の検挙件数は、『犯罪白書』によると2009年に1478件だったが、2014年には3265件に増えている)。
これら盗撮の一部はインターネットでの販売が目的だったとしても、ひいては他の男性たちの女性身体への関心と結びついている。また一部はスリルを味わうために、達成感を得るために、あるいはストレスを発散するために等の理由で行われる場合もあるが、その場合でも、多かれ少なかれ当の男性の女性身体に対する欲望と無関係ではない。というより、それがあるからこそ、スリルの実感、達成感の獲得、ストレスの発散のために盗撮が選ばれるのである(杉田聡『レイプの政治学――レイプ神話と「性=人格」原則』、明石書店、61頁、106頁以下)。
そして、一部はおそらくAV等のポルノにより作られたものだとはいえ、女性の身体に異常な関心をもつ男性も少なくない。その事実を軽視しないほうがよい。一例をあげる。
びろうな話で恐縮だが、私はかつてある大学図書館の手洗いで個室に入ってしゃがんだ際、壁のちょうど目の前の位置が何かで彫られたような跡があるのを、目にしたことがある。
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