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漫画の実写化が原作イメージを破壊する本当の理由

業界が悪いのではなく国民気質が原因では?

勝部元気 コラムニスト・社会起業家

『あのコの、トリコ。』『あのコの、トリコ。』の公式サイトより

 近年、邦画(日本の映画)は、漫画が原作の作品が非常に多くなっていると言われています。たとえば、2018年には以下のような漫画原作の邦画が誕生しました。厳密な統計があるわけではないのですが、これらはあくまで一例に過ぎないことを考えると、増加傾向にあることは事実のような気がします。

 『咲-Saki-』『不能犯』『羊の木』『リバーズ・エッジ』『坂道のアポロン』『ちはやふるー結びー』『曇天に笑う』『いぬやしき』『ママレード・ボーイ』『となりの怪物くん』『恋は雨上がりのように』『BLEACH』『銀魂2 掟は破るためにこそある』『響-HIBIKI-』『あのコの、トリコ。』『ビブリア古書堂の事件手帖』『春待つ僕ら』『ニセコイ』

 また、2019年にも『翔んで埼玉』『キングダム』『アルキメデスの大戦』『地獄少女』『ヲタクに恋は難しい』等の実写化が決定しており、漫画を実写化した映画が続々と生まれる傾向は今後も続きそうです。

なぜ、実写化のキャストは原作とイメージが違うのか?

 その一方で、実写化が決定した際、漫画原作のファンだった人々からは、選ばれたキャストや世界観の描き方に対して、「原作イメージと全然違う!」という嘆きや不満の声が吹き上がることが少なくありません。

 そのイメージの乖離に対して、「原作レイプ」という俗語すら生まれています(※ただし、「レイプ」という重大な人権侵害の行為を安易に比喩として用いることは不適切だと思いますし、そもそも原作者と合意のある実写化映画と異なり実際のレイプには合意が無く、例えとしても不適格なので、この言葉は使用するべきではないと考えています)

 もちろん、原作ファンが「こうあって欲しい」と望んだものを全て忠実に再現することが必ずしも正解ではありませんし、作品に対して「こうあるべきだ!」という要望があまりに膨らみ過ぎるのは、ある種自分勝手な側面もあると思います。ですが、私のように漫画をほとんど読まない人間から見ても、彼等の言う通り、邦画の実写化は原作イメージとかけ離れたキャストが選ばれることが非常に多いのは間違いありません。

製作サイドが世界観よりも優先しているもの

 なぜ、日本で原作とイメージがかけ離れた実写化がなされるのか、その理由の一つとしてよく言われているのが、映画界の業界構造です。実写化の中心となる製作委員会は、映画会社、広告代理店、テレビ局、新聞社等が資金を出資しているために、多くの「利権」が絡んでいると言われています。

 そのため、原作イメージの世界観の再現よりも、なるべくリスクを避けた上でヒット作にすることに重点が置かれ、とりあえず飛ぶ鳥を落とす勢いのある売れっ子俳優を起用するという判断に傾くようなのです。

 実際に、冒頭であげた2018年の実写化映画のキャストを見ると、男性俳優であれば、吉沢亮氏、山崎賢人氏、菅田将暉氏等、女性俳優であれば、玉城ティナ氏、土屋太鳳氏、小松菜奈氏等と、同じ俳優が何作も登場していることが分かります。確かに、人気俳優を起用すれば、TVの芸能ニュースや「モデルプレス」等のネット芸能ニュースサイトで大々的に取り上げてもらえる機会が増えるので、良いPRになります。

 また、大手芸能事務所がキャストに対する影響力を持っていることも、原因の一つと言われています。事務所側がヒットしている俳優や、これから売り出したい俳優をゴリ押しするという話はよく聞きます。場合によっては、監督等の制作側がキャストを選ぶよりも前にキャストが決まってしまうことすらあるようです。

映画視聴者の多数派は原作無視でもOK

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