メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

小川彩佳は番組の「顔」じゃなくて「頭脳」なんだ

矢部万紀子 コラムニスト

「news23」(TBS系)「news23」(TBS系)の公式サイトより

 メインキャスターが小川彩佳さんになった「news23」(TBS系)は、いろいろなことが変わっていた。まずはサカナクションの音楽、新海誠監督のアニメ。まるでパイプオルガンの中にいるかのようなスタジオ。「とにかく変えるんだ!」という熱が伝わってきた。

 放送初日(6月3日)の視聴率は、4.3%(ビデオリサーチ調べ、関東地区、以下同)。裏番組の「news zero」(日本テレビ系、9.6%)や古巣の「報道ステーション」(テレビ朝日系、9.9%)に及ばなかったことから、早速「期待はずれ」「初回つまずき」などと報じられた。

 小川さんは放送5日目の7日、ゲストの糸井重里さんとのやりとりで、「月曜にこの番組に参加して、口内炎も吹出物もできて余裕のない状態で、どうすればやさしくなれるのか……」と弱気な心情を吐露していた。

 だが、小川さんに言いたい。視聴率なんか気にしないで、このまま「自分の人生、どーんと、ど真ん中を歩いていって」と。

 カギカッコの中は、2007年の朝ドラ「ちりとてちん」でヒロイン喜代美が口にした台詞からとった。地元の短大に推薦入学が決まっていたのに、高校の卒業式を終えてすぐに大阪へと向かう喜代美。あてなど何もない。それでも家を出ると決め、母親にこう言ったのだ。

 「自分の人生なのに、こそこそ隅っこ、歩きたくない。どーんと、ど真ん中を歩きたい」

 この台詞こそ「女子の本懐」であると心をわしづかみにされ、以来、朝ドラを熱心に見るようになった私だが、ニュース番組の女性キャスターにこそ、この台詞をお渡ししたいとかねて思っていた。

 だから小川さんがテレビ朝日を退社、「news23」のキャスターに就任すると知って以来、とても期待していた。だってそうだろう、小川さんは「報道ステーション」のキャスターをしていた。決して評判は悪くなかったのに交代となった。後任は元テレビ朝日アナウンサーの徳永有美さんだった。

「真っ向勝負感」に欠ける有働由美子さん

 徳永さんは、タレントのウッチャンこと内村光良さんの妻である。そしてテレビ朝日会長のお気に入りだと、事実かどうかは知らないが報道されている。誰が誰と結婚していても、ちっともかまわない。一般論だが、上司が部下を気に入ったり、気に入らなかったりは組織でよくあることだ。

 だけど「報道ステーション」を見ていて、なるほどこういう理由で小川さんから徳永さんに変わったのだなという納得ポイントが見つからない。しかも富川悠太アナウンサーもメインキャスターとなっていて、二人の役割分担がよくわからない。さらには、後藤謙次さんという元共同通信の人が「コメンテーター」という肩書きで座っている。結果、このような流れになる。

 徳永さんor富川さんがニュースを読む→徳永さんor富川さんが少し眉をひそめ、「後藤さん」と呼びかける(批判or困惑を込めています、と眉に言わせる)→後藤さんが知見に基づいた意見を言う→次の話題に移る。

 つまり後藤さんの意見が「正解」であり、後藤さんが「正解を言う人」になっている。

 というような構図は、小川さんが報道ステーションにいた時もあまり変わらなかったと思う。私自身、「正解を言う人」の存在に気づく道のりは、いろいろあった。2018年10月、「あさイチ」(NHK)で一斉を風靡した有働由美子さんが「news zero」のキャスターに起用されたことが、ひとつのきっかけになった。

news zero」から。番組冒頭にあいさつをするキャスターの有働由美子さん「news zero」(日本テレビ系)から。キャスターの有働由美子さん
 本音を言葉にするのが上手で、「脇汗」「セックスレス」など“ヒット企画”を飛ばした有働さんが、ニュース番組のメインキャスターになったらどうなるのだろう。そう思った人は多かったろうし、私も期待した一人だった。が、フタをあけてみれば有働さんは真ん中に座ってはいるものの、横にはいつも日本テレビの解説委員や櫻井翔さん、落合陽一さんらがいて、その人たちに「どうなんでしょう?」と振るのが主な仕事になっていた。

 有働さんは明るく、彼らとのやりとりは軽快で、「ニュースを楽しく見てね」というのが「news zero」のコンセプトであろうことはわかる。だけど、これではどうも、有働さんの「真っ向勝負感」に欠けるよなあ、と思った。

「きれいなおねえさんは、好きですか。」という報道番組

・・・ログインして読む
(残り:約2810文字/本文:約4669文字)