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力士のSNS使用は条件を付けて解禁すべきだ

岸田法眼 レイルウェイ・ライター

 2019年九州場所前、小結阿炎(25)と十両の若元春(26)がInstagram(インスタグラム)で不適切動画をアップし、波紋を呼んだ。土俵外で観客の座布団が舞うような行為に公益財団法人日本相撲協会(以下、協会)は2人を呼び出し、厳重注意。その後、現役力士に対してSNS使用の自粛が通達されたのち「当面禁止」に変わった。

 20代半ばにもなっての子供じみた行為に「なにやっとんだ」と言いたくなるが、協会の姿勢にも疑問を持つ。

「全面禁止」は協会の短絡的な思考

 21世紀最大の「ヒット商品」といえるのは、SNSだ。

 角界では2005年に元小結普天王(稲川親方)がブログを始めたのが最初のようである。現役時代に自身の取組の感想などを述べていたが、不祥事を境に更新が途絶えた。

 そして、2006年、元大関2代目栃東(玉ノ井親方)もブログを開設。体調を崩し、30歳の若さで引退を余儀なくされたが、その会見前に引退表明の記事をアップし、ファンへの想いを優先した(当該ブログは閉鎖済み)。

 その後も様々な力士がブログ、Twitter、Instagramを立ち上げたほか、大半の相撲部屋もホームページやFacebookページを開設した。自ら広報活動をすることで、ファンとの距離を縮め、新しいファンを獲得し、さらに新弟子の獲得にも乗り出したといってよい。特にTwitter、Instagramの普及によって、力士のプライベートショットも増えた。

 しかし、それが2力士の軽率な行為で、現役力士のSNS使用が当面禁止になってしまった。この判断は協会幹部が再発防止策と位置づけたのだろうが、関係ない力士を巻き沿いにする姿勢は、短絡的思考としか言いようがない。こうした姿勢は、協会の特徴といってもよく、力士が土俵外で、よくも悪くも目立つことに疑問をもっているように思う。

 それを表すものとして挙げておきたいのは、春日野理事長(第44代横綱栃錦)が力士の土俵外の活躍に業を煮やしたのか、1985年に力士のCM出演やレコード発売を原則禁止にしたことだ。要は「土俵以外で銭を稼ぐな」ということなのだろう。

 それでも企業側のオファーが後を絶たず、例外もあった。そして2002年1月より、力士のCM出演を解禁。協会や企業にとって、力士は広告塔になるのだから、協会幹部は相乗効果を期待したのだろう。また、元大関2代目増位山は定年後、歌手活動を事実上再開した。

1980年 ギターをつまびく大関増位山.大関増位山は「歌手」としても評判だった=1980年

力士の私生活をSNSで公開する必要はない

 協会もホームページのほか、Twitterで情報を随時更新している。特にTwitterはおもに幕内の取組結果や告知を行なう。協会の広報部が更新しているそうで、“型どおり”の情報のみを流すせいか、世にいう「炎上」はない。

 力士や親方衆のTwitterにある程度アクセスすると、頻繁に更新しているのは二子山親方(元大関雅山)で、所属力士の成績などをツイートし、弟子の相撲を分析している。基本的に角界に対する持論は述べない。ほか、九重親方(元大関千代大海)、中村親方(元関脇嘉風)、第69代横綱白鵬などのTwitterも拝見したが、比較的更新間隔が空いている。

 もっとも、ツイートするほどヒマではなく、協会に在籍していた貴乃花光司氏(第65代横綱。現・貴乃花道場理事)のように、波風を立てるような言動を避けたいのだろう(要は力士や親方のほとんどは、歴代理事長のイエスマン?)。

 ただ、気になるのは、力士に限ったことではないが、私生活の様子をツイートやInstagramでさらけ出す必要があるのかだ。まるで思い出の詰まったアルバムを一般公開しているようなものだ。相撲部屋や国技館内、巡業先の様子を更新するのは“仕事場”なのだから理解できるが、例えば行きつけのお店やジムなどをアップしたら、心ない野次馬が場所を特定して駆けつけ、店の営業にも影響を与えかねない。

ツイッターに掲載された写真=峰崎親方(元幕内・三杉磯提供8月、力士がツイッターに投稿した夏合宿の写真はネットで話題に=峰崎親方(元幕内・三杉磯)提供

 また、リアルタイムで“今、自分はここにいます”的なものをアップすると、

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