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韓国で広がるME TOOが日本で広がらないわけ

日本のアイドルは素直で純朴。韓国のアイドルは賢くて強い!

ミン・ヨンチ ミュージシャン 韓国伝統音楽家

日韓で人生の半々を過ごしたが…

 日本と韓国で半分半分の人生を過ごした。およそ、四半世紀を両方でね。

 世にいう、バイリンガル。周りには、うらやましい!とか、あこがれる!とか言われるが……はたして、どうなのか?

 僕の場合は、特に韓国の伝統音楽、国楽を職業としているので、2か国語喋れたとて、バイリンガルが実際そんなに、大きな利点ではない。

 実際、僕の場合は日本語ができるからといって、特別仕事が増えるわけでもない。逆に最近は不利のような雰囲気だが、今までは、完璧実力主義なので、それでやってきた。

 日本で活動している時はどうだったかな?

 少しは、バイリンガルが役に立ったが、日本での韓国伝統音楽の市場があまりにも小さかったので、実際はあまり関係なかった。

 ある時東京で、知人に紹介されて、韓国関係の仕事をしている人たちの集まりに行って食事会をしたことがある。その中で「ところで、みんな韓国にどれくらいいたの?」という会話があった。

 「わたしは3か月!」「僕は9か月くらいかな」「わたし1年ちょっと」「私は2年弱」……。

 「すごーい!けど、やっぱり1年以上は行ってないと言葉が完璧じゃあないよね」って、3か月の子が言ったら、9か月の子が「僕は全然大丈夫。問題ないよ」「すごーい!!」と、かっこよく。

 で、ミンさんは?

 「私、20年」

 シーーーン。

 で、私が「じゃあ、せっかくだから、これから韓国語でしゃべろうよ!」って提案したら、「いや、その、こ、ここは日本だから日本語で楽しみましょ」。

Mila Duchinskaya/Shutterstock.com

 あ、これで、また思い出した。

 東京で音楽関係の人たちとの食事会で「みんなどこの出身?」。「埼玉」「秋田」「札幌」「名古屋」「大阪」「福岡」……。さすが東京、いろいろな地名が出てくる。

 埼玉のどこですか? 秋田の、名古屋の、どこですか?

 大阪出身は結構何人かいて、大阪のどこですか?

 ある人は「東淀川」「へえー」

 ある人は「阿倍野区」「へえーすごーい!なんか聞いたことある―!」「そうやろ、阿倍野区は大阪で結構ディープだよ!」「すごーい!」

 で、ミンさんは?

 「私、西成」

 シーーン。シーーン。特に阿倍野区シーーン(阿倍野区は西成区の隣なのです)。

 私の人生、こんなのばっかりである。

日韓のアイドルはずいぶん違う

 一番感じるのは、そのお国柄というか、考え方が違う点。

 韓国は、やっぱり儒教かな。縦の社会。なんか問題が発生すると、その問題解決と並行して、目上の人の考えと、その方が傷つかないように考えてしまうこと。

 良い事なのでしょうが、それによる弊害はいっぱいある。

 例えば、韓国のとある大手航空会社が、着陸失敗で大事故を起こした。

 原因は、ブラックボックスで分かった。機長のミスを副機長は知っていたが、事故の発生する直前、ミスを指摘できなかったのが、原因。

 お客の命より、縦の社会を守ったのである。

 日本は、とにかく手続きが遅い。慎重なのはいいが、なんでこんなに時間がかかるのか、分からない。

 それに、途中で関係している会社が多すぎる。中間業者とか仲介業者とか。

 たとえば、何十年かぶりに日本で暮らすようになって、インターネットを申し込んだら、2か月待ってくださいって。

 2か月!? 2か月もあったら、猿も人間になりますよ。

 それに、ブロバイダーはどこにしますか?とかいう。

 ブロバイダーってなに?

 そんなの外国では聞いたことないよ。

 とにかく、誰が決めたか知らないが、日本はいろいろな決まりや手続きが多すぎる。それが身についているので、それに反したりすると、すごい変な目で見られ、仲間外れみたいになる。これが、いじめの源みたいなものかな。

 韓国もまだまだ、男女差別はあります。

 特に法事の準備。これは必ず女性だけがします。めちゃくちゃしんどそうです。

 最近は、女性が大変なので、法事をしない家庭も増えていますが、それでも、大半はやっています。

 男は何もしません、食事しているだけです。男にさせるのは、女がなってないという風潮もあるので、男が気を利かせて台所をウロウロするのは、かえって迷惑に思われる可能性もあります。

 日本でビックリしたのは、全世界で問題になったセクハラ、「ME TOO」運動。

 韓国でもたくさんの勇気ある女性たちが声をあげ、大きな大きな社会問題になりました。今でもその影響はあり、少しずつ社会の意識が変わっているのが感じられます。

 これが日本では大々的に起こらなかった事。ほんとビックリした。

 困っている女性たちが声をあげることすらできなかった、唯一の発展国です。

「#Me Too」と書かれた横断幕の前で発言する集会の参加者=2018年4月23日

 間違ってるかもしれないけど、日本で「ME TOO」運動が広がらない風潮として、日本の女性アイドルと韓国の女性アイドルとの違いでみることができるんじゃないかなと思うんです。

 まず、韓国のアイドルはある程度背が高くて、すらっとしてて、整形でも何でも顔がキレイな感じを好みます。日本は、全体的に小さくてカワイイ感じ。良い意味で身近にいる女の子的なアイドル。

 何が言いたいかというと、素直そうで純朴そうでできれば賢そうでない女の子を好む傾向にあるという事。韓国では、賢くてスタイル良くてリーダーシップもあるような、いわゆる強そうな女の子は人気があります。

 素直で純朴が好まれる社会、強くて意思のある女性を敬遠するような雰囲気では「ME TOO」運動はしんどいでしょうね。日本の女性はそれを強いられているような、男性もいつ気付くんだろうか。

二つの国に友達がいる。先生、先輩、後輩、親戚がいる

 こんなことを、常に感じてしまうのが、2つの国を行き来する、バイリンガルの私です。

 なぜなら、アイデンティティーも2つ持っているからです。

 これはもう、大変である。常に、問題点を感じてしまいますから。

 バイリンガルもモノリンガルも、生きている時間は一緒なので、各々に感じ、学習している時間も一緒なので、限りがあるのであります。

 3か国語以上できる、マルチリンガルの人たちの語学実力なんかは、1、2か国語くらいは、大人くらいのレベルだが、それ以上はほとんどの方が、幼稚園か小学校低学年くらいの語学レベルだそうです。

 まして、それらの国を行き来して生活していたら、アイデンティティーもごちゃごちゃになるでしょう。

 わたしですら、日本語と韓国語を、モノリンガルの人のように悠長にできません。

 けど、いい面は、2つの国に友達がいます。親友がいます。先生、先輩、後輩、親戚がいます。これは、本当に楽しいのです。財産であります。

 世の中が発展し、たくさんの国に行き来できるようになって、増えていく、バイリンガルやマルチリンガル。この方たちこそが将来の地球の要であると思う。

 なぜなら、たくさんの国を理解でき、人種や文化、経済、政治までも、理解できるからである。

 もう遠くはないと思います。何十年か後にはこういう人たちが、力を発揮して、真の地球村を作って、平和な世の中を構成するのではないでしょうか。

 今日はここまで!

P.S.
2020年 ミンヨンチ&トライソニーク ジャパンツアー決定!!
2/7 名古屋 ジャズイン・ラブリー
2/8 大阪 ミスターケリーズ
2/9 京都 ライブスポット・ラグ
2/11 東京 六本木・サテンドール
各ハウスにご連絡を!!