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「#検察庁法改正案に抗議」した芸能人を叩いた者の正体は

理想の社会を語るところから政治参画を始めよう

勝部元気 コラムニスト・社会起業家

 政府が進めている検察庁法改正案に対して疑問を持った1人の女性が、「#検察庁法改正案に抗議します」というハッシュタグを作ってTwitterデモを始めたところ、そのタグが瞬く間に広がり、著名人を含む約900万件にも及ぶムーブメントに発展しました。

 アーティストのきゃりーぱみゅぱみゅさんや水野良樹さん(いきものがかり)、俳優の小泉今日子さん、浅野忠信さん、井浦新さん、秋元才加さん、演出家の宮本亜門さん、タレントのラサール石井さん、元格闘家の高田延彦さんのほか、多くの作家や漫画家も賛同しました。モデルで俳優の水原希子さんは署名活動にも参加しています。

 日本の芸能人が政治的発言をほとんどしない中、様々な分野の著名人が政治に対して同時に声を上げたのは、異例中の異例と言えるでしょう。

 これに影響されたのか、一連の法案を審議する5月15日の国会中継(衆議院内閣委員会)をインターネットで視聴する人が増えたようです。Twitterで「国会中継 初めて」で検索すると、初めて国会中継を見た人々が、答えになっていない政府答弁や、野党批判をする日本維新の会の質問に対して、驚き呆れる投稿が散見されました。このムーブメントを機に、国民の政治参画意識がわずかかもしれませんが高まったことは間違いありません。

衆議院内閣委員会で答弁する森雅子法相。右は武田良太・国家公務員制度担当相=2020年5月15日衆議院内閣委員会で答弁する森雅子法相。右は武田良太・国家公務員制度担当相=2020年5月15日

声を上げた著名人へのバックラッシュが酷い

 この抗議の声を上げた著名人らに対しては、激しいバッシングが相次ぎました。「潰す」「干されるぞ」「黙ってれば良いのに」といった攻撃的投稿が多々寄せられたのです。とりわけ、きゃりーぱみゅぱみゅさんへの攻撃は熾烈で、結局彼女は投稿を消してしまいました。

 また、「人気商売なのだから政治的発言はやめておいたほうがいい」と“指南”をする人も数多くいました。民主主義国家の日本では、全ての国民に政治的発言をする権利と自由があるにもかかわらず、それを「芸能人なのだから」という理由で断念させようとするのは、民主主義そのものの否定です。

 さらに、「何もしらないくせいに」(ママ)のように、マンスプレイニング(相手が自分より知識が無いと勝手に思い込んで、上から目線で物事を教えようとする言動で、主に男性から女性に向けられることが多い)も多々ありました。

 たとえば、きゃりーぱみゅぱみゅさんに対しては、政治評論家の加藤清隆氏から「歌手やってて、知らないかも知れないけど」と、職業差別的発言が飛ばされています。これも十分相手を黙らせる効果があるものです。

検察庁法改正案に抗議する俳優・井浦新さんのツイート検察庁法改正案に抗議する俳優・井浦新さんのツイート

芸能人の政治的発言が叩かれたわけではない

 このような一連のバックラッシュを受けて、芸能人の「政治的発言」について議論が巻き起こっています。ですが、今回はたんなる「政治的発言」とはやや違うように思います。

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