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グローバル化のなかの男性アイドル、そしてボーダーレス化へ

太田省一 社会学者

 前回は、近年におけるジャニーズのネット解禁、そしてそのなかで勢いを増したジャニーズJr.の現状についてみた。連載最終回となる今回は、そうした動きを男性アイドル全般というより大きな文脈の中に位置づけてみたい。そしてそのうえで今後の男性アイドルがどこに向かうのかについても少し話を進めてみたいと思う。

ジャニーズ事務所=東京都港区
ジャニーズ事務所=東京都港区

パフォーマンス志向を強めるジャニーズ

 前回、新たにジャニーズJr.の育成・プロデュースする責任者となった滝沢秀明にとって、「Jr.黄金期」の再来がひとつの大きな目標になっていることにふれた。

 ただその実現にあたっては、単純にこれまでのやりかたを踏襲すればよいというわけではないだろう。前の黄金期からはすでに約20年の年月が経ち、アイドルのありようも変化している。実際、2020年に華々しく同時メジャーデビューを果たしたSixTONES(ストーンズ)とSnow Manを見ても、昨今の男性アイドルのトレンドを踏まえた部分が垣間見える。

 それは、パフォーマンス志向の強まりである。

 この連載で再三ふれてきたように、男女問わず日本的アイドル観は、未完成の魅力をコアにしたものである。確かに容姿、歌やダンスの魅力も大切だが、どんなことであれ未熟であっても努力を怠らず成長する姿そのものがアイドルの不可欠の魅力であり、その成長のプロセスを共有しながらファンは応援する。

 しかしながら、近年はそうした従来のアイドル観へのアンチテーゼとも思える流れが少しずつ強まっているように映る。歌であれダンスであれ、当初からパフォーマンスのクオリティを求める流れである。言い換えれば、アイドルにとって最初からより完成されたものとしてあることが重要になっているということだ。

 SixTONESやSnow Manについても、その点は例外ではないように見える。たとえば、MVはもちろんのこと、持ち歌のダンスの部分だけを見せるダンスバージョンの動画などを見ても、パフォーマンスへの力の入れ具合が伝わってくる。

 むろん、それぞれのグループの個性は異なる。SixTONESは「ダンスが揃わない」ことを自虐することもあるほど各メンバーが個を表現するダンスであり、Snow Manはジャニーズ伝統のアクロバット要素を盛り込みながらグループとして魅せるダンスである。だがいずれにしても、どちらも従来のアイドル的な決められた振り付けというよりは自己表現として追求されたダンスになっている。

 そうしたところは、彼らがEXILE、三代目 J SOUL BROTHERS from EXILE TRIBE、GENERATIONS from EXILE TRIBEなどのLDH JAPAN所属グループと同じ時代に生きていることを感じさせる。それらのグループは“アーティスト的アイドル”と言えるのではないかと前に書いたが、ジャニーズもまたある意味でその立ち位置に接近している。

K-POP人気と男性アイドルのグローバル化

 また同様の流れとして、K-POPの動向も見逃すわけにはいかない。

 かつて2000年代に、東方神起のような韓国出身の男性アイドルグループがオリコンチャートで1位を獲得するなど日本でも活躍する現象があった。現在の若者を中心にしたK-POP人気は、大きくとらえればその歴史のうえに成り立つものと言える。

 しかし、根底にあるベクトルとしては異なる面がある。

 東方神起などを見ても、

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