メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

北海道知事は、コロナ感染回避の努力を道民に丸投げするな

「3密」回避の個別・具体的な指示を

杉田聡 帯広畜産大学名誉教授(哲学・思想史)

 コロナ禍の「第3波」に全国が巻きこまれている。私が住む北海道では、ことに札幌市で、感染者数が急拡大している。

 そのため鈴木知事は、北海道の警戒レベルを全道的に「3」にすえおいたものの(「2」を「3」に上げたのはまだつい先日である)、札幌市民に対して「4」に上げると、11月17日に正式に決定した。その結果、札幌市では、不要不急の外出自粛、道内他地域との往来の自粛が求められることになった(朝日新聞2020年11月18日付)。

居酒屋の店長に深夜営業の自粛などをお願いする道と札幌市の職員=札幌市中央区20201114札幌の「すすきの」で、居酒屋の店長に深夜営業の自粛などをお願いする道と札幌市の職員=2020年11月13日

「感染リスクを回避できない場合」

 だが不分明なのは、これに付された「感染リスクを回避できない場合」という条件である。無条件的な自粛要請ではない点は評価できるが、では「感染リスクを回避できない場合」というのはどういう場合か。

 それは、「感染対策が不十分な施設を利用したり、いわゆる『3密』の状況になるなどしたりする場合」だそうである(朝日同前)。実際にはもう少し具体的な言及があるが、最後は「リスクが回避できているかどうかの判断は『(道民)自身で考えて』」もらいたい、というのが知事の立場である(朝日同前)。

 けれどもこれは「対策」と呼べる代物なのか。結局道民に自ら判断せよと言っているだけである。だがはるかに重要なのは、知事がより直接的な仕方で行政権限を行使できる相手(各種事業者・施設)に、意味ある対応を求めることではないのだろうか。

 なるほど道民への協力要請も重要である。だが、「感染対策が不十分な施設」が有ること自体が問題ではないか。道民に協力を要請する前に、まずそうした施設に対して、個別・具体的でより強力な指示を行うべきであろう。

徹底されない「3密」回避

店舗関係者の新型コロナウイルス感染が分かり、全店で臨時休業した北海道帯広市の観光名所「北の屋台」=2020年11月11日午後2時半、北海道帯広市20201111店舗関係者の新型コロナウイルス感染のため、帯広市の観光名所である屋台村「北の屋台」は全店で臨時休業した=2020年11月11日

 一例をあげる。

 私は10月初旬、ある「日帰りバスパック」で一日をすごした。目的は紅葉狩りである。現場近くのホテルでの昼食や露天風呂も魅力的で、「お徳」な日帰りツアーだと思った。

 参加を決めたのは、コロナ対策がしっかり施されていると分かったからである。バス内では参加者が隣通しに座らないよう配慮してあり、また車内では「飲食お断り」とされていた。飲食と言っても、ここではアルコール類を想定しているのであろう。アルコールが入れば、つい人は大きな声で話すものであるから。

 だが、コロナ対策は結局不十分だった。バスは特急列車などと比べて窓の開閉は比較的容易であり、したがって「密閉」を避けるために重視される換気もしやすいはずである。だが、バス内は空気が滞留して蒸し暑く、上着を脱がなければならなかったのは、対策が不十分だったためと思われた(ちなみに事情があって翌日、同じルートを走る市内バスに乗車したが、その車内では、前日より陽が射していたのに、換気のおかげで多少の肌寒さを覚えるほどだった)。

 しかも、バスツアーの一環である近隣ホテルでの昼食時には、対策の不十分さが明らかだった。会場が

・・・ログインして読む
(残り:約2903文字/本文:約4144文字)