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丸川珠代さんが「アンチ竹中平蔵」から「アジアンビューティー」へ至る道

矢部万紀子 コラムニスト

 小泉純一郎政権下で経済学者の竹中平蔵さんがブイブイ言わせていた時、彼に敢然と反旗を翻す女がいた。丸川珠代さんだ。

 そう、あの丸川さん。東京五輪・パラリンピック担当大臣にして男女共同参画担当大臣。「選択的夫婦別姓制度」に賛同しないよう地方議員に求める要望書に名前を連ねていた丸川さん。

 20年近く前、テレビ朝日アナウンサーだった丸川さんは、小泉内閣の「七つの改革プログラム」(もちろん、竹中さんが中心になって作った)についてこう書いていた。

<このプログラムは、日本経済のムダをなくし効率的なシステムにして、頑張った人に優しい社会を実現しようとするものである。裏返せば、格差は容認されるということであり、「効率の悪い弱者よ、去れ」という号令にも受け取れる>

 この文章、出典は彼女の著書『ダマされるな!――目からウロコの政治経済学』(2003年)。と言っても共著者がいて、慶應大学教授の金子勝さん。「ああ、それならね」と思った方には、「違うんです」と言いたい。これは、彼女の言葉です、と。

かつては反竹中新自由主義路線だった丸川珠代さんかつては新自由主義的経済政策に批判的だった丸川珠代さんだが……

民主党は丸川珠代さんに立候補を要請するべきだった

 丸川さんがメールで質問を送り、金子さんが回答を送る。そうしてできた本だ、と金子さんが「はじめに」で書いている。丸川さんの質問は、「わからないから教えてください」ではない。目次から質問を拾うと、「『小泉改革』って結局どうなんですか?」「アメリカの愛国心が暴走しそうです」などなど。問題意識をぶつけているのだ。

 丸川さんの「あとがきに代えて」が面白い。先ほどの文章もそこからの引用だ。金子さんと2000年元旦の「朝まで生テレビ!」で出会い、「この先生は現実を見ている」と直感的に思い、その年の秋から大学院の授業に出るようになったことなどを説明したあとに、こう書く。

<カネコマサルの経済に対する皮膚感覚を想像するにあたって、興味深いヒントがある。セーフティーネットに対する考え方について、カネコマサルのライバル、と世間が揶揄する竹中平蔵先生と比較してみよう>

 「カネコマサル」とした理由は、「先生とここに書くのは照れ臭いので、敬称略の上カタカナ書きにさせていただきます」と括弧内で説明する。対する竹中さんは、一貫して「竹中先生」。先ほど引用した「七つの改革プログラム」についての文章は、この少し後に出てくる。金子さんへの共感、竹中さんへの反感が、品よくあふれる。

 いやー、民主党はこの本が出た直後に丸川さんにダッシュで会いに行って、

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