メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

報道ステーションのWebCM炎上から見えた制作者の「思考回路」

幻想にはばまれる日本社会のジェンダー平等への道

梁・永山聡子 社会学、ジェンダー・フェミニズム研究、社会運動論

 3月22日、「報道ステーション」(テレビ朝日系)のWebCMが炎上した。主人公の女性が「ジェンダー平等とかって、何それ、時代遅れ」などと発したり、テロップに「こいつ報ステみてるな」という、まるで男性が主人公の女性を下にみる表現が用いられ、「女性蔑視だ」「ジェンダー平等に取り組む人をバカにしている」などと批判があり、公開2日後に削除された。このCMの問題点は、ジェンダー研究者を中心に大方的を得た分析が行われており、詳細はそちらをご覧いただければと思う(ハフポスト日本版、朝日新聞、東京新聞、毎日新聞など)。

CMの取り下げを伝える「報道ステーション」のツイッター投稿CMの取り下げを伝える「報道ステーション」のツイッター投稿

 筆者が社会学を基礎とするジェンダー・フェミニズム研究者として気になっているのは、「このCMって届けたい層に届いているのか?」である。

 なぜ、これが大事な視点なのだろうか。端的に言って、ジェンダー平等はその社会の反映であり、また個人の努力のみで解決できることではない。だから「わたしには関係ない」という問題ではないのである。従って、しばしば登場する「ズレ」を見るにつけて、社会の実態と幻想(思い込み/こうあって欲しい/こうあるべき)の行方が気になってしまうのだ。

1)このCMはどこの層をねらったのか?

 「報道ステーションのCMを見てどう思った?」(筆者)
 「う? なんですかそれ?」(20歳代女性)
 「ほら、あれだよ、炎上したCM。俺は〇〇(女性政治家)好きじゃないけどジェンダーがどうのこうのって」(40歳代男性)
 「う? 知らないです」(20歳代女性)
 「〇〇さん(20歳代女性)のような世代にみてほしいっていうCMだよ」(筆者)
 「いやー、興味ないですね」(20歳代女性)

 緊急事態宣言があけてすぐ、飲食店の友人の「悲鳴」を見かねて、東京のオフィスエリア近くの居酒屋で中小企業の会社員たち(高卒・大卒・理系・文系混在)が店を貸し切りにしていた。

 筆者は取材ではなく友人として聞いてみた。40代男性は、CMを批判した女性政治家を「過剰反応。意図をわかってない」と左派陣営を軽蔑し、20代女性は「報道ステーション? そもそもニュース見ないし。子ども連れてくる? うー、意味よくわからない」と言って、すぐに、隣の同僚とバラエティ番組の話をしだした。40代男性は、普段は「ふつう」に日本社会をわたり歩き、女性蔑視的思考を普通に内面化している人だ。現代のスタンダードである。明確に「おんなは〇〇だ!」というタイプではない。20代女性も同様である。

 この会話を聞いて「あ、やっぱりな」と実感した。その「やっぱり」とは、

・・・ログインして読む
(残り:約2576文字/本文:約3694文字)