何が起きているのか集め、残し、公開する
2021年04月25日
コロナ禍で血を流すライブエンターテインメント。3度目の緊急事態宣言で、傷は一段と深くなった。国内外の舞台を取材するジャーナリストが、その状況をリアルタイムで記録するサイト作りに取り組んでいる。
2020年の日本のライブエンターテインメント市場規模は、前年比約8割減(ぴあ総研調べ)。コロナ禍で前代未聞の危機に陥っている業界のひとつであり、実際に昨年来、把握しきれないほど次々と経験したことのない事態が起きていて、舞台を提供する側も観客も、ずっと戸惑い続けているのが現状だ。さらにパンデミックで先が見えないなか、ほかの国や地域の舞台芸術界が、それぞれどんな事情を抱えているのかも、非常に気になる。
いったいこれまでに何が起き、いま、自分たちはどの地点にいるのか。少しでも事実を把握し不安をしずめたいという想いから、「世界ステージ・カレンダー with コロナ」というウェブサイトを開設した。東京、ソウル、ニューヨーク、ロンドン各都市の舞台情報を伝えてきた総合舞台専門誌『act guide』の執筆・編集・デザインにかかわっているメンバー有志で、いまこつこつと、4都市のこの一年余と現在をカレンダー化している。
2020年2月26日は、日本のライブエンターテインメント業界にとっては忘れがたい日で、「2.26事件」と呼ぶ人までいたりする。 この日、安倍首相(当時)がスポーツ・文化イベントの2週間自粛を要請したことで、同日のPerfumeやEXILEの公演が中止になったのを皮切りに、東京中の劇場やホールが、次々と上演の中止や延期を決定していった。以後政府は、自らが指定した日が近づくたびに再延長の要請を行い、イベント主催者はその「要請」に翻弄されながら、中止と実施の間を右往左往することとなった。
おそろしいことに、その状況は一年以上経った現在も続いており、物心両面においてライブエンターテインメントの根幹を揺るがしているので、関係者には、その発端となった「2.26」という日が刻印されている、というわけだ。
日本がそんなカオスにはまり出したころ、まだふつうに公演を行っていたニューヨークのブロードウェイの劇場で、案内係がコロナウイルスに感染したというニュースが入った。2020年3月11日のことだ。
驚いたのはその処置で、主催者は劇場内の消毒を行ったうえで、その後も平常通りに公演を行ったという。案内係は観客に接する業務だけに、そのダメージと影響ははかり知れない。日本で同じことが起きたら、即刻上演中止で劇場閉鎖となるだろう。ブロードウェイは、コロナウイルスの感染力に対する認識が甘いのではないか。そう不安を覚えずにはいられなかった。
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