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ラジオ体操が菅・バイデンに勝った!──カットできない朝6時半

野菜さらだ コラムニスト/言語聴覚士

 4月17日の土曜日の朝6時、いつも通りに、コロナ禍のおかげですっかり日課になった散歩に出た。片耳から聞こえてくるNHKラジオ第1放送、これもいつも通りだ。土曜日は、6:15頃に楽しみにしているコーナー「サエキけんぞうの素晴らしき20世紀ポップ」もある。歩きだして間もなく、「それでは、日米首脳共同声明を……」と首相就任後、初めてアメリカを訪問している菅総理とバイデン大統領のライブでの共同声明がいきなり同時通訳で始まった。

 「あら!」と思って、そのまま歩く。いつも予定されている番組プログラムというプログラムが全部吹き飛んで(語義通り、決まった時間に流れる天気予報も交通情報も何もかも吹き飛んだ)、声明放送が続く。「えええ??」。私が楽しみにしていたコーナーも何の説明もなく、なくなった。「このまま、6時半のラジオ体操もなくなるのか……」と段々不安になってきた。そう、モーニングコーヒーのお楽しみ(「セルフレジ、自転車置き場、ネット銀行……客のミニバイトが始まっている」)の前には、「ラジオ体操」を行うのも常だからだ。

 そのときがやってきた。6時半。何事もなかったかのように「いつも通り」ラジオ体操が始まった。これには、逆にびっくりした。「え? え?」そう思いながら、それならば、と私もいつも通りラジオ体操を行った。

千里ニュータウンの公園で毎朝行われているラジオ体操。「朝だけが生きがいです」と話す人もいた=2020年5月9日午前6時31分、大阪府豊中市大阪府豊中市の千里ニュータウンの公園で

再会はオレンジジュースがもたらした偶然

 ラジオ体操、日本で小学校・中学校に通った人であれば、おそらく事あるごとに校庭に“並ばされて”やったことがあるだろう。私も子ども時代にラジオ体操をやっていたときのことは鮮明に覚えている。運動会の前などに「準備体操代わり」にさせられていたとき、「なんでこんな生ぬるい運動が準備になるんだ!?」と思いながらやっていた(今から思えば、本当にかわいくない小学生だ)。

 しかし、大人になった今は、体操の一つ一つの動きで体がギコギコ音を立てるようである。要するに、体が硬くなって動かないのだ。「年取ると体が硬直してくるんだよ」。私の妹がかなり前に言った言葉を思い出す。「ほんとだ……」。

 高校卒業以降、ラジオ体操を行うことはほとんどなかったと思う。そんな私に再びラジオ体操とのご縁が復活することになったのは、偶然のなせる技だった。

 10年くらい前のある晩、喉の具合が悪く、いつもはそういうときにオレンジジュースを爆飲みして対応するのだが、たまたまその日は常備のジュースがなく、夜明けと共に近くのコンビニに買いに自転車で出かけたときのことだ。途中、母校の中学校の校庭を通り過ぎるときに「いち、に、さんしー」とラジオ体操をやっている地域の方の姿を見かけたのである。

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