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Colabo叩きのネット右派、根拠弱く不正を訴える姿はまるでQアノン

攻撃を主導する家父長制的な2つのクラスタとは

勝部元気 コラムニスト・社会起業家

 2023年1月8日、ブラジルでボルソナロ前大統領の支持者らが、連邦議会などを襲撃する事件が発生しました。彼らは前大統領が敗れた前年の選挙に不正があったと主張し、約1500人もの拘束者が出ています。

 アメリカでも、2021年にトランプ前大統領の支持者(≒「Qアノン」という陰謀論の信奉者)が、類似の主張をして連邦議会議事堂を襲撃する事件が起こっています。この2つの事件に共通するのは、「ネット右派」の運動という点と、根拠が脆弱であるにもかかわらず選挙を「不正だ」と主張している点でしょう。

Qアノンの信奉者が集うイベントに参加した男性=2021年10月、米ラスベガスQアノンの信奉者が集うイベントで=2021年10月、米ラスベガス

 ただし、「根拠が脆弱なのに不正を主張するネット右派の運動」は、必ずしも選挙に限った話ではないと思います。たとえば、十分な根拠も示さずに「治験に不正がある!」と主張する反ワクチンの運動もその一つです。

 そしてそのような運動の波は日本にも押し寄せています。それが、ネット上で広がっている一般社団法人Colabo(コラボ)と、その代表者である仁藤夢乃氏に対する一連のデマ・バッシング騒動ではないでしょうか。

ネット上で巨大化した「Colaboバッシング問題」

 Colaboは、家庭等に居場所がなく困難を抱える若い女性を支える活動をしている民間団体で、東京都から若年被害女性等支援事業の委託も受けています。そのColaboに対して、「公金を不正受給している!」「公金チューチュースキームだ!」(文末【補足】参考)等の様々なデマやバッシングが、2022年の夏頃から半年以上大量に出回っています。

 また、様々な嫌がらせや、中には殺害予告・レイプ予告も届いているとのことです。2022年10月頃には、Colaboが所有するバスが傷つけられるという実際の「襲撃事件」まで発生しています。

 それらの攻撃によって身の危険や事業への支障が生じていることから、Colaboは2022年11月、ネット上で反Colabo運動を中心となって展開する男性を提訴しました(「女性支援団体Colaboを「誹謗中傷」 投稿繰り返した男性を提訴」朝日新聞、2022年11月29日)。

Colaboがカフェとして使用しているバスの被害について訴える仁藤夢乃代表=2022年11月29日、東京都千代田区「一般社団法人Colabo」がカフェとして使用しているバスの被害を訴える仁藤夢乃代表=2022年11月29日、東京都千代田区

提訴後もエスカレートし続けるColaboバッシング

 ところが、デマやバッシングは提訴後も止む気配がなく、むしろ膨張し続けています。Twitterでは「Colabo」がトレンドワード入りし続け、インプレッションが20万件を超える日も多数あったほどです。

 右派界隈や「冷笑系」界隈ではColaboを叩いたり、疑惑があると主張したりすれば注目される事態になっています。政治家、コメンテーター、YouTuber等が続々と“参戦”し、まるで「現代版魔女狩り」のように見えます。迷惑系YouTuber等による活動現場への妨害行為も発生しています。

 メディアでも、旧統一教会(世界平和統一家庭連合)系の「世界日報」、産経新聞の「チャンネル正論」、「月刊Hanada」等が反Colabo運動に同調するかのような記事を発信し、嫌韓ビジネスならぬ「嫌女ビジネス」的な様相を呈しています。「左翼利権が問題だ」と主張する傾向も強く、もはや一団体の問題を凌駕し、社会問題化しているのではないでしょうか。

反Colabo運動とQアノンの共通点を報じて欲しい

 このような反Colabo運動に参加する人々のことを、「暇アノン」と呼ぶ人もいます。アメリカの陰謀論に基づく政治運動「Qアノン」と、反Colabo運動を中心となって展開している男性のハンドルネームを掛け合わせて作られた造語のようです。

 アメリカの陰謀論者は、「ディープステート(闇の政府)が存在する」と主張しますが、反Colabo運動も「Colaboをはじめとした『ナニカグループ』が裏で政治に根を張り日本を支配しようとしている」という類の主張をしており、確かに共通点は少なくありません。

 つまり、これは「Colabo問題」ではなく「Colaboバッシング問題」です。マスメディアは、産経新聞のように反Colabo運動に同調するかのような記事を出すのではなく、Qアノンの問題と同様、それと非常に似た動きをする「反Colabo運動」の特異な実態にこそスポットライトを当てて報じて欲しいものです。

Colaboバッシングはどのように始まったのか

 でも、なぜこのような事態に至ったのでしょうか。前述した反Colabo運動を中心となって展開する男性は、運動の動機について、「作品を燃やす人間を調べ上げて腹探るのが趣味」などと繰り返し述べていました。

 ここで言う「作品を燃やす」とは、温泉地を萌えキャラクター化した「温泉むすめ」というキャンペーン企画について、仁藤氏がその女性蔑視的な表現を批判したことを指しているようです(Twitter、2021年11月15日)。

 仁藤氏の指摘を受けて批判が高まり、運営側は表現を修正したのですが、この出来事を「フェミニストによって作品を燃やされた」として恨みを持った2次元キャラクター好きな人々が一定数いたようで、この男性もその一人だったのかもしれません。

「右派」を因数分解したら見えて来た5つの要素

 次に、なぜこの一連の騒動が、議会襲撃事件と同様に、「ネット右派」の運動なのかについて解説します。

 データ解析をして「反Colaboクラスタは保守系アカウントが多い」と結論付けた記事を鳥海不二夫東大教授が公開していますが、ここではそれを概念的に分類しながら論証します(「女性支援団体Colaboの炎上分析」Yahoo!ニュース、2023年1月4日)。

 まず、(右と左という概念をどう定義付けするかによって変わると思いますが)「右派」とは以下5つの要素を持っている人々だと私は捉えています。

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