メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

れいわ新選組代表 山本太郎さんインタビュー

「地獄」をつくったのは無関心な私 脱消費税を掲げ、旧体制と闘う

山本太郎 れいわ新選組代表

 世界をみると、スウェーデンの環境活動家グレタ・トゥンベリさんのような若者をふくめ、様々な人たちが社会運動や政治活動にとりくみ、思いを伝えよう、実現しようと活動しています。一方、日本ではそうした活動はあまり活発とはいえません。反原発運動から政界に入り、自身「デモから生まれた政治家」だと話す、れいわ新選組の山本太郎代表に、体験や政治参加の意義、課題などを聞きました。(聞き手 朝日新聞編集委員・松下秀雄/インタビュー写真 小林正明)

当事者の言葉のパンチ力

報道関係者に囲まれる「れいわ新選組」の(左から)舩後靖彦氏、山本太郎代表、木村英子氏=2019年8月1日、東京・永田町の参院議員会館

――重い障がいがある、れいわの木村英子、舩後靖彦両参院議員が国会で初の質問に臨みました。傍聴して私が感じたのが「この質問は私にはできない」ということでした。木村さんは車イス用トイレが多機能トイレになって障がいのある人には使いにくくなり、困った経験を紹介した。舩後さんは筋萎縮性側索硬化症(ALS)が進行して人工呼吸器をつけるか否か、つまり生きるか死ぬかの選択を迫られ、生きる意味を考えた経験を伝えました。初質疑の感想は?

山本 「感慨深い」の一言で片付けるのはもったいないくらいです。障がい者政策に光をあて、発言した議員は数々いたと思いますが、当事者が国会に入ることで大きく動くのを目の当たりにしました。

 お二人の質問をみて、私も知らなかったことがありました。障がい者のみならずいろんな方々が多機能トイレを使うようになれば混雑し、使える確率が低くなるのはあたりまえですね。木村さんの訴えに対して国土交通大臣がしっかり受け止める姿勢を示されたのも印象的でした。私が参議院にいた時は、そんなに声を聞く姿勢ではない大臣が結構いましたから。やはり当事者がいうパンチの強さというか、影響力は大きいと思いました。

 もう一つ、舩後さんという存在。いきなり電子音声で質疑が始まる。つくってきた原稿を秘書が読み上げ、その場で文字盤を使って再質問をつくる。舩後さんもちょっと焦ったと思うんですよ。意思表示をするのにはどうしても時間がかかるのに持ち時間は25分と決められているから。

 最初は、再質問をつくる間も時計を止めないという話だったんです。それでは持ち時間が減るので「それはないだろ」と言っていたんですけれど、結局は止めてくれることになったらしい。国会も二人の存在に学びながら、いままさに変化しているということだと思います。

社会のあり方が弱者をつくる

――国会議員のほとんどは「健常者」といわれる人たちで、しかも比較的裕福な中高年男性が多い。国会がそういう構成だから、選択的夫婦別姓や同性婚が認められなかったり、障がいのある人が十分な介助を受けられなかったりするのではないでしょうか。議員の偏りについてどう思いますか。

山本太郎・れいわ新選組代表
山本 いまの選挙の制度では金持ちしか参戦できない。既得権益を守る仕組みだと思います。供託金は高額だし、政治そのものに金がかかる。ただでさえ人材不足といわれる政治の世界で、世の中を変えたい気持ちはあるけれど、お金がないため参戦できないのは悲劇です。やる気がある人を排除する制度は、将来的に変えていく必要があるでしょう。

 私は、世の中のあり方が弱者をつくり出していると思っています。たとえば舩後さん、木村さんが質疑をする時には介助者が手伝い、「健常者」と同じように発言できる状況を周りがつくる。これが障がい者権利条約などに定められた「合理的配慮」ですけれど、一般社会でも合理的配慮がなされるなら弱者といわれる人はいなくなるでしょう。そういう意味でも、まず永田町に象徴的存在を誕生させられたのは良かったと思います。

 お二人に「特定枠」で立候補してもらおうと思いついたのは、れいわ新選組を旗揚げしてからですが、その前から、障がいのある方に出ていただこうとアプローチしていたんです。でも、おそらく普通の選挙制度では国会議員になるのは難しい。クオータ(割り当て)制の導入を求める声もありますが、男女比を変えるだけでなく、障がいのある方とかいろんな当事者に入ってもらえる制度にしなきゃいけないと思います。もちろん男女比も重要です。永田町は完全なおっさん文化。だから女性にも「名誉おっさん」になろうと必死になる方がいますが、それは不健全です。時代はもう変わっているわけですから。

――参院選の比例代表に、優先的に当選できる特定枠を設けた自民党のねらいは、鳥取と島根、徳島と高知をそれぞれ一つの選挙区に合区したことに伴い、立候補できなくなる人の救済でした。この制度を障がいのある二人の議席確保に活用しようと思いついたきっかけは?

山本 本当にふと思い出したんです。この制度を導入する時、私は反対しました。合区したのは自民党で、合区の尻拭いをするための制度なんて「何をなめたこと言ってんだ」という気持ちだった。けれど、お二人と一緒に選挙をやったとしても当選の確率はかなり低い。そんな時、「特定枠があったよな」って。

 選挙が始まる前の2月と6月の2回、5千サンプルくらいの電話世論調査をしたんです。山本太郎が旗揚げし、比例代表で出た場合にどうするかというような設問です。6月の段階では、200万票は固いと票読みできる結果が出ていた。選挙運動を盛り上げていけば票は伸びるはず。この200万票は特定枠を使ってお二人に差し上げようという考えに至った。その次は、票を稼げるのは私がトップだろうから、私までは入るだろう。そこからが勝負だなと
・・・ログインして読む
(残り:約7501文字/本文:約9778文字)