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為政者と対峙するジャーナリズムは憲法が求める役割 鋭い追及こそが政治記者へのリスペクトをもたらす

政治報道は変わったか(1)

デイビッド・ハルブフィンガー ニューヨーク・タイムズ政治エディター

 ネット時代のいま、時差なく米国の新聞やテレビニュースを読んだり視聴したりできるようになった。大統領やホワイトハウスの報道官による記者会見もユーチューブで配信される。こうした環境でつくづく感じるのは米国の主要メディアの報道で政治ニュースが圧倒的な存在感を持つことだ。同時に、政治記者たちの質問の仕方や匿名取材源の使い方といった観点から、日米の政治ジャーナリズムの比較も興味深い。

 ニューヨーク・タイムズやワシントン・ポストなどのリベラル系主要メディアはトランプ政権の4年間、トランプ氏に徹底して敵視されたが、政権内部の動きに関する多くのスクープを放ち、メディアの苛烈な競争が政治報道を盛り上げた。国境を越えてこうしたメディアの動きを観察できるのもデジタル時代の醍醐味だ。

 2021年にバイデン政権に交代した後も、トランプ政権末期の同年1月に起きた議会襲撃事件をめぐる下院特別委員会の調査や、ホワイトハウスから機密文書を違法に自宅に持ち帰った疑いなどをめぐるトランプ氏への捜査など、同氏関連のニュースが依然、政治報道の大きな比重を占める一方で、昨年11月の中間選挙では、バイデン氏の当選の正当性をいまだに認めない多くの共和党議員や候補者、支持者たちの存在や、人工妊娠中絶を憲法上の権利と認めた1973年の判決を覆した昨年6月の最高裁判断など、米国社会の分断を深める問題が大きな争点となり、世界が米国の政治報道に注目した。

 中間選挙が終わったタイミングで、ニューヨーク・タイムズの政治エディターのデイビッド・ハルブフィンガー氏に政治ジャーナリズムが今直面する課題や問題などについて聞いた。

 *ニューヨーク・タイムズが2016年3月に導入した匿名報道に関する新しいルールはこちらからどうぞ。

――ニューヨーク・タイムズの政治エディターの役割を教えてください。

ハルブフィンガー 政治エディターは、大統領選や中間選挙を中心に全米各地の政治の動きを取材する政治グループ(Politics desk)を統括しています。私が2021年7月にこのポストに就任した時、選挙の戦略・戦術、選挙関連のさまざまなニュースといった伝統的な政治報道に加え、最優先課題の一つと位置づけたのは、米国の民主主義が直面しているさまざまな脅威を取材する専従チームの新設でした。記者6人のチームを立ち上げ、選挙制度や投票権(侵害)の問題、過激な右派メディア、政治的暴力、トランプ主義、(2020年の大統領選の結果を認めない)共和党の選挙否定論者たちに焦点を絞った多様な報道を積極的に展開してきました。

 これと関連して、ジョセフ・カーン編集主幹の下、編集部門全体としても民主主義への脅威という問題に取り組む態勢を敷き、4~5人の調査報道の担当記者やグラフィック担当者たちが共和党の選挙否定論者らの動きを追ってきました。11月の中間選挙まで、この国の民主主義の行方にとって、この選挙がいかに重要であるかを伝える多くの報道を展開しました。

オンラインのインタビューで質問に答えるデイビッド・ハルブフィンガー氏

――ニューヨーク・タイムズの政治報道全体の組織構成はどうなっていますか。

ハルブフィンガー 政治グループとは別に、経済や人工妊娠中絶問題、健康医療といった個別政策テーマを担当する記者の多くは国内報道グループ(National desk)、政府を取材する記者たちはワシントン支局に属しています。私が管轄する政治グループとこれらのチームが連携しながら政治報道を展開しています。

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