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「不公正な取引方法」への課徴金、その「リスク」の実態、独禁法改正の皮肉な現実

川合 弘造

 独占禁止法の昨年の改正で、課徴金納付命令の対象となる行為が「不公正な取引方法」などに拡大されたが、その実態はどうなのか。独占禁止法に詳しい川合弘造弁護士が分析した。(ここまでの文責はAJ編集部)

 

課徴金賦課対象行為の拡大と執行力の強化
= 独禁法改正がもたらした皮肉な現実 =

 

西村あさひ法律事務所
弁護士  川合 弘造

 昨年(平成21年)改正された独禁法が施行されて半年以上が経過している。

 ○独禁法平成21年改正のポイント及び「課徴金リスク」増大への懸念

川合弘造弁護士川合 弘造(かわい・こうぞう)
 弁護士。1984年、東京大学法学部卒業。東京大学法学部助手を経て司法修習(40期)。1988年、弁護士登録(第一東京弁護士会)。93年、米国コロンビア大学ロースクールLL.M修了、94年、ベルギー・カトリック・ルーベン大学法学部大学院修士課程(EC法専攻)修了。94-95年、ベルギー・ブラッセルの法律事務所に勤務、95-97年、通商産業省(当時)通商政策局で課長補佐。2006年から現在まで、東京大学法科大学院で経済法(独禁法)の非常勤講師。
 この改正のポイントは、

  • 課徴金賦課対象行為類型の拡張、
  • 課徴金減免制度の柔軟化、
  • カルテル・談合に対する刑事罰の引き上げと時効期間の延長 (行政処分にかかる除斥期間の延長)、
  • 企業結合規制のグローバル化対応に伴う見直し

といったところにあった。

 このうち、「課徴金賦課対象行為類型の拡張」は、課徴金を排除型私的独占と言われる行為や、一部の類型の「不公正な取引方法」と言われる行為にも拡大しようとするものである。これを受けて、法律雑誌では、「課徴金リスク」が高まるとして、特集が組まれるなどしている。

 ○「排除型私的独占」及び「不公正な取引方法」の取り締まりのこれまで

 しかし、実は、「排除型私的独占」と言われる行為が公正取引委員会によって問題にされた例は少なく、これまで、2-3年に一度程度に過ぎなかった。「不公正な取引方法」についても、1回目の行為から課徴金が賦課される「優越的地位の濫用」と言われる行為を除くと、不当廉売、差別対価、共同の取引拒絶、再販売価格の拘束の行為類型のいずれかに該当した上で

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