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《詳評》 NHKドラマ「鉄の骨」 建設業界の談合を舞台に、時代の波にもまれる群像を描く

 建設業界の談合を題材とした、池井戸潤の小説を映像化した。これまで「監査法人」「企業買収」「国税査察官」などをテーマにしてきたNHK土曜ドラマらしい、硬派な作品だ。

  ▽筆者:増田愛子

  ▽この記事は2010年7月3日の朝日新聞朝刊テレビ欄に掲載された原稿に加筆したものです。

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 ゼネコン入社3年目の平太(小池徹平)は、建築・設計の現場から、別名「談合課」と呼ばれる土木の営業に異動となる。最初は違法行為への加担に抵抗を感じるが、「会社を支えるのは自分たち」と説く上司らに影響されて仕事にやりがいを感じるようになっていく。

 ドラマが舞台とした2005年は、談合を自主申告した企業への課徴金減免制度などを盛り込んだ改正独占禁止法が成立し、大手ゼネコンが「脱談合」を申し合わせた年。批評的な視点を避け、時代の波にもまれる当事者たちに寄り添って描いているところに、「裏プロジェクトX」的面白さがある。

 フィクサー役の中村敦夫、仕切り役の金田明夫らベテラン勢が、談合を支えてきた海千山千の「おやじ」たちを好演。談合ですべてが決まっていたかつての「ムラ型社会」を懐かしむゼネコン幹部(志賀廣太郎)には、同情に似た感情さえ抱いてしまった。

 一方で、ドラマの「視点」ともいえる平太の心境の変化の描き方には、いくぶん物足りなさも感じる。公共工事や談合の仕組みについてはもう少し丁寧な説明があったほうが、親切だろう。

 放送は17日までに3回が終了。巨額の地下鉄工事の落札を巡る各社の駆け引きに加えて、合併など業界再編の動きや建設族の大物議員の登場など、物語は激しく動いている。テー

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