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企業年金の積立不足が喫緊の課題に 年金減額が無理ならどうするか?

 企業年金が企業を苦しめている。低金利や不況で積み立ての不足が経営の重荷になっている。退職者の年金が手厚く守られる状況に複雑な感情を抱く現役社員が少なくないし、「経営実態に応じて、減額などの変更をもう少し柔軟にできるようにすべきだ」という声が経営者の間にある。しかし、退職者について年金を減額するには厳しい制約があり、そのことは最近の最高裁判決でも確認された。日本航空の企業年金の問題を担当した森倫洋弁護士が現状と対策を考察した。(ここまでの文責はAJ編集部)

 

企業年金の積立不足への対応

西村あさひ法律事務所
弁護士 森 倫洋

森 倫洋弁護士森 倫洋(もり・みちひろ)
 西村あさひ法律事務所パートナー弁護士。東京大学法学部卒、ハーバード・ロースクールLL.M。1995年判事補に任官(東京地裁(民事部)配属)。その後、判事補海外留学研究員として米国留学し、帰国後、最高裁民事局(倒産法改正担当)、福岡地裁(労働部)勤務)。2005年弁護士登録。専門は、労働法、事業再生、訴訟。
 日本航空の年金減額問題を機に昨年末から、様々なメディアで企業の年金の積立不足に関する報道がなされるようになった。もっとも、報道の中には、企業年金制度に関する正しい理解がなされていないものも散見される。日本航空の例では、これが確定給付企業年金法に基づく年金であり、会社と別に企業年金基金が別法人(社団)として存在する「基金型」のものであるということが意識されていない報道・コメントが目立ったように思う。

 ■さまざまな企業年金のかたち

「企業年金」と呼ばれるものには、

(1) いわゆる年金の3階建ての構造の2階部分にあたる厚生年金保険料の一部を基金の掛金とし、基金独自の給付に充てる掛金と合わせて運用し、支給する「代行部分」が設けられている厚生年金基金によるもの、


(2) 企業が国税庁の承認を得て生命保険会社や信託銀行等と契約を結び掛金を納付することで運営される税制適格年金(ただし2012年3月末に廃止される。)、


(3) 確定給付企業年金法(「DB法」と略称される)に基づく確定給付企業年金、


(4) 確定拠出年金法(「DC法」と略称される)に基づく企業型の確定拠出年金、


(5) その他の私的年金(自社年金)

など様々なものがある。

 さらに、このうち(3)の確定給付企業年金

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