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同業者間の情報交換、どこまで許されるのか?

競争法の観点から 欧米で厳しい規制

 同じ業界に属する企業の社員がテーブルを囲んだとき、口にしてはならないことがある。特に欧米で活躍する企業では注意が必要だ。競争の阻害につながるふるまいと受け止められかねないからだ。例えば、欧州委員会は現在、どのような情報交換が競争法上問題となるのかを明らかにするための基準づくりを進めている(欧州委員会のウェブサイト掲載のガイドライン案へのリンク)。西村あさひ法律事務所の島田まどか弁護士が各国の規制の実態を解説する。

 

同業者間の情報交換、どこまで許されるのか?

西村あさひ法律事務所
 弁護士 島田まどか

 ■はじめに

島田 まどか(しまだ・まどか)
 1996年、東京大学法学部卒業、1999年弁護士登録。2003年ハーバード大学ロースクール(LL.M.)修了、2005年ハーバード大学ケネディスクール修士課程修了(M.P.A)。
 企業の秘密情報の管理は、常に重要な問題であるが、同業者間での情報交換は、独禁法(競争法)の観点から、大きなリスクを伴う。近年の度重なる独禁法の改正や、執行の強化により、「談合」についてはやってはいけないという認識が広く共有されてきたが、いわゆる談合において行われる入札価格や受注の調整に至らずとも、同業者の間での情報交換は、市場における協調行為につながりやすいため、「カルテル」とみなされ、各国の競争法の下に制裁を受ける可能性に、常にさらされている。

 2010年5月、欧州委員会が公表した水平的協調に関するガイドライン案(以下「水平的協調ガイドライン案」という。)は、初めて情報交換に明示的に焦点をあてた内容で、内外の注目を集めた。各国競争当局のカルテルに関する執行の強化が顕著である今、同業者間の情報交換は、競争法に関わる専門家の間でも議論の中心となっている。本稿では、各国の規制を踏まえ、同業者間の情報交換にまつわる問題を概観したい。

 ■カルテルと情報交換:各国の規制

 (1) 日本

 カルテルに関する規制は、各国において微妙に異なる。我が国の場合、同業者間の情報交換から発展する可能性のある水平的な協調行為は

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