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アーバンコーポ虚偽で株主の請求を全額認容 東京高裁判決

奥山 俊宏

 2008年8月に民事再生法の適用を申請した不動産会社アーバンコーポレイション(広島市)の企業情報開示にウソがあったとして、個人投資家が同社を相手取って損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が11月24日、東京高裁第11民事部(岡久幸治裁判長)で言い渡された。高裁は一審判決を変更し、原告・投資家の請求をすべて認めた。原告訴訟代理人の荒井哲朗弁護士(東京)は、「上場企業の情報開示について極めて適切な判断がなされた判決であると評価している。後続する集団訴訟や他の虚偽記載事案(ライブドアなど)にも影響を与えると思う」とコメントしている。


 アーバンコーポレイションは株式を東京証券取引所一部に上場していたが、2007年暮れごろから資金繰りに窮するようになった。そうしたさなか、同社は2008年6月26日、BNPパリバ本社に対して300億円の新株予約権付社債を発行すると発表した。その際、関東財務局に提出して公表した臨時報告書などに、社債発行で得られる資金の使途について、「財務基盤の安定性確保に向けた短期借入金を始めとする債務の返済に使用する予定です」と記載した。

 ところが、実際には、社債発行で調達した300億円は7月11日にBNP本社にいったん戻す形で支払われ、結果的に、アーバンコーポレイションの手元に残ったのは92億円に過ぎなかった。アーバンコーポレイションは8月13日に経営が行き詰まって民事再生法の適用を申請し、それと同じ日、社債発行で調達した資金の使途について6月26日の情報開示を訂正して、「割当先との間で締結するスワップ契約に基づく割当先への支払いに一旦充当し、同スワップ契約に基づく受領金を(中略)使用する予定です」と公表した。

 11月24日の高裁判決によると、原告の投資家は8月12~13日にアーバンコーポレイションの株式3300株を22万7600円で購入した。8月13日に同社の倒産と300億円の真の使途が明らかとなり、株価は急落。3300株は8月15日、2万9700円で売却され、原告の投資家は19万7900円の損を出した。

 この19万7900円の損について、民事再生手続きを監督している再生裁判所は「原告の取引形態が売りと買いを同日内に行う取引を繰り返していたから瞬時の値動きによって利益捻出を図るものであり、虚偽記載により損害が発生したとは認めがたい」として、会社に対する損害賠償請求債権をゼロと査定した。原告投資家はこれに異議を申し立てたところ、一審・東京地裁判決は19万7900円の損のうち15万8320円を原告の債権と認める判決を出した。2割の減額の理由について、東京地裁判決は「原告の損害には、本件各記載によって生ずべき値下がり以外の事情によるものも一定程度含まれていることは否定できない」とした。

 11月24日の高裁判決はこれに対し、19万7900円全額を原告の債権と認めた。高裁判決はその理由の中で、「資金調達の方法に虚偽記載があったことが公表されたことで、同社の信用が喪失し、今後の同社の資金調達の見込みが失われたことに株価下落の原因があった」と認定。「民事再生手続き開始の申し立てを虚偽記載等の公表と同日に行ったからといって

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