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こんにゃくゼリー死亡、メーカー責任認めず「PL法上、欠陥ない」 神戸地裁姫路支部判決

 兵庫県の男児(当時1)が「こんにゃくゼリー」をのどに詰まらせて死亡したのは食品としての安全性に欠陥があったとして、両親が製造物責任(PL)法に基づいてマンナンライフ(群馬県富岡市)と同社社長らに約6240万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が17日、神戸地裁姫路支部であった。中村隆次裁判長は「通常の安全性を備えており欠陥はない」と述べ、両親の請求を棄却した。こんにゃくゼリーの製造元の責任をめぐる判決は初めて。

  ▽筆者:宮沢賢一、川田惇史

  ▽この記事は2010年11月17日の朝日新聞夕刊(大阪)と翌18日の朝日新聞兵庫版に掲載された原稿を再構成したものです。

  ▽関連資料: こんにゃくゼリーの製造物責任を認めなかった2010年11月17日の神戸地裁姫路支部判決の全文

  ▽関連資料: 神戸地裁姫路支部が認定した事実

  ▽関連資料: 被告会社の責任に関する神戸地裁姫路支部の判断

 

 判決によると、男児は1歳9カ月だった2008年7月29日、マ社のこんにゃくゼリー「蒟蒻畑(こんにゃくばたけ)」を祖母から凍らせた状態で与えられてのどに詰まらせ、約2カ月後に亡くなった。

販売が一時中止される前(左)と販売再開後の「蒟蒻畑」。形と大きさに変化はないが、警告を呼びかける表示や弾力性が変わった
 両親は昨年3月に提訴。訴訟で「こんにゃくゼリーは通常のゼリーよりも弾力性が強く、物をかむ力やのみ込む力の弱い子どもや高齢者にとっては危険性が増す食品だ」と主張。パッケージ裏面の警告表示は不十分で、同社ホームページに「冷やすとより一層おいしく召し上がれます」と表示されていたことから、消費者がゼリーを凍らせることをマ社側は予想できたと訴えていた。

 マ社側は、内閣府食品安全委員会の今年6月の評価書を踏まえて「のどに詰まらせる事故が起こる頻度はアメと同等だ」と反論。凍らせる食べ方に関しては「周りの大人が幼児に食事をさせる際に注意を払っていなかった」としていた。

 判決は(1)こんにゃくゼリーの「冷やすと硬さや付着性が増す」などの特性はこんにゃく自体のもので、通常のゼリーと食感が異なることは消費者も十分認識できた(2)当時、外袋に子どもや高齢者への注意を呼びかけるイラスト入りの警告表示があった――などと指摘。幼児らに与える際には食べやすい大きさに加工するのが通常と考えられるとして、製品にPL法上の欠陥はないと結論づけた。

 判決後に会見した原告側代理人の土居由佳弁護士は「不当な判決。消費者庁などがこんにゃくゼリーの安全性について検討しており、悪い影響を与えるかもしれない」と述べた。マ社代理人の松坂祐輔弁護士は「冷静に結論を出してもらった。食物による窒息事故で毎年4千人以上が亡くなっており、そのうちこんにゃくゼリーは(年間)1.7人。国はこんにゃくゼリーだけでなく対策を考えてもらいたい」と話した。

 ■各地で死亡事故 4訴訟中3件は和解 危険性への評価、行政も分かれる

 こんにゃくゼリーは弾力に富んだ独特の食感で人気を集め、2007年度の市場全体の売り上げは約117億円。「蒟蒻畑(こんにゃくばたけ)」を販売するマンナンライフが約7割を占めた。一方で17日の判決によると、幼児や高齢者がゼリーをのどに詰まらせる死亡事故が各地で相次ぎ、兵庫の事故を含めて22件発生している。

 このうち、1996年の茨城県の男児(当時2)▽2007年の三重県の男児(同7)▽08年の兵庫県の男児(同1)▽05年の愛知県の女性(同87)――の死亡事故が

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