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JR西前社長、無罪主張 宝塚線脱線事故初公判 神戸地裁

 107人が死亡、562人が負傷した2005年4月のJR宝塚線(福知山線)脱線事故で、業務上過失致死傷罪に問われたJR西日本の前社長山崎正夫被告(67)の初公判が21日、神戸地裁(岡田信(まこと)裁判長)で開かれた。検察側は約40分かけて起訴内容を朗読し、起訴状に書いた被害者名をすべて読み上げた。一方、山崎前社長は「当時の私の立場で事故現場カーブの危険性に気付くことはできなかった」と述べ、無罪を主張した。公判は次回以降、28回の期日が決まっており、来年秋ごろに結審する見通し。

  ▽筆者:沢木香織

  ▽この記事は2010年12月21日の朝日新聞夕刊(大阪)に掲載されたものです。

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神戸地裁に入る山崎正夫JR西日本前社長=21日午前9時29分、神戸市中央区、新井義顕撮影神戸地裁に入る山崎正夫JR西日本前社長=21日午前9時29分、神戸市中央区、新井義顕撮影
 山崎前社長は安全対策を統括する取締役鉄道本部長だった1996年、現場カーブが急曲線に付け替えられて脱線事故発生の危険性が高まったことが認識できたのに、自動列車停止装置(ATS)を整備しなかったとして起訴された。鉄道事業者の安全部門トップが事故の刑事責任を問われるのは異例で、被害者が求めてきた事故原因の解明やJR西の安全対策の不備について、司法がどのような判断を示すのか注目される。

 裁判長から起訴内容への見解を聞かれた前社長は傍聴席と検察官席の遺族らに深々と一礼し、「亡くなられた方やご遺族、おけがをされた方に深くおわび申し上げます」と謝罪した。そのうえで「(起訴内容は)事実と全く異なる。そのような決めつけはショックだ。裁判で潔白を明らかにしたい」と全面的に争う姿勢を示した。

 弁護側も罪状認否で「カーブでの制限速度の順守は、国家資格を有し、路線の情報を十分に把握した運転士の運転操作に委ねることができるというのが鉄道業界での常識的な考えだった」などと指摘。事故を予測できた可能性(予見可能性)と事故を防ぐ義務(結果回避義務)があった場合に成立する同罪にあたらないと主張した。

 検察側は冒頭陳述で、現場カーブが半径600メートルから304メートルの急曲線に付け替えられた96年12月、前社長は安全対策の実質的な最高責任者だったと指摘。(1)JR西は90年以降、半径450メートル未満のカーブにATSを順次整備していた(2)カーブ付け替えに加え、97年のダイヤ改定で現場カーブを通る快速電車が急増し、脱線の危険性が飛躍的に高まった――とし、「速度超過による事故を予想してカーブにATSを付けることは当時の業界の共通認識だった」などと主張した。

 こうした状況で前社長がATSを整備しなかったとする理由については、元部下らの捜査段階の供述などに基づいて主張を展開。ATSを路線ごとに整備する社内方針を絶対視した前社長が、危険なカーブに個別に整備したらコストがかかると考え、運転士に制限速度を守るよう指導すれば事故を防げると安易に判断したと指摘するとみられる。

 遺族・負傷者は08年に導入された被害者参加制度を利用し、過去最多の約50人が法廷で前社長に質問したり、量刑意見を述べたりする。一方、神戸地検が不起訴処分としたものの、神戸第一検察審査会の起訴議決を受けて強制起訴された井手正敬(まさたか)元会長(75)ら歴代社長3人については、争点や証拠を絞り込む手続き(非公開)に向けた準備が進められている。

 ■過失の有無、どう判断 《解説》

 なぜ、事故が起きたのか。遺族らが投げかけてきた疑問の解明が、5年8カ月の歳月を経て司法の場で進められることになった。

神戸地裁に入る主任検事ら=21日午前9時46分、神戸市中央区、新井義顕撮影神戸地裁に入る主任検事ら=21日午前9時46分、神戸市中央区、新井義顕撮影
 裁判の争点は、山崎前社長が将来
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