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石川知裕衆院議員ら初公判 小沢一郎元民主党代表の政治団体の事件で

 小沢一郎・元民主党代表の資金管理団体「陸山会」の土地取引事件で、元秘書3人の裁判が始まった。検察への信頼が揺らぐ中、捜査段階でいったんは虚偽記載を認めた元秘書側は調書の信用性を争い、徹底抗戦の構えだ。ゼネコンからの裏金はあったのか。小沢氏の関与をうかがわせる話は出るのか。強制起訴された小沢氏自身の公判にも影響する攻防は夏まで続く。

  ▽この記事は2011年2月7日の朝日新聞夕刊と翌8日の朝日新聞朝刊に掲載された原稿を再構成したものです。

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  ▽関連資料: 石川知裕議員らの起訴内容

  ▽関連資料: 起訴内容についての石川知裕議員の認否意見

  ▽関連資料: 起訴内容に対する大久保隆規元秘書の認否

  ▽関連資料:   起訴内容に対する池田光智元秘書の認否

 

 ■罪状認否 元秘書3人が否認

 3人の被告は軽く一礼して入廷。罪状認否では、それぞれが用意した紙を読み上げて無罪を主張した。陸山会の会計責任者だった大久保隆規被告(49)は、起訴状に出てこなかった水谷建設側からの裏金5千万円の受領についても「断じてありません」と検察側の機先を制した。

罪状認否で手元の原稿を読み上げる衆院議員石川知裕(中央)と、大久保隆規(左)、池田光智(右)の各被告=東京地裁104号法廷、絵と構成・小柳景義
 衆院議員の石川知裕被告(37)は、A4の用紙3枚にわたって用意した意見を約5分間、淡々とした口調で読み上げ、銀行や不動産業者とのやりとりを詳細に説明した。

 関連団体からの寄付の不記載についても、「いわば身内の間のやりくりに過ぎず、収入とか支出という認識もなかった」などと弁明した。最後に、水谷建設からの5千万円の裏金についても「そのような事実は断じてない」と強調した。

 池田光智被告(33)は、収支報告書に起訴状に書かれた内容の記載があることは認めつつ、「これが虚偽の記入や不記載にあたるとは言えない」と主張した。

 ■検察側 1億円の流れを詳細に

 検察側は冒頭陳述で、小沢氏の地元・岩手の「胆沢ダム」建設工事受注をめぐり、小沢氏側に水谷建設から1億円の裏金が渡ったと主張。その経緯を詳細に述べた。

 冒頭陳述によると、水谷建設元社長は、ダムの本体工事と岩石採取工事で下請け会社の中心となる幹事会社に自社が選定されることを目指して、小沢事務所への陳情を決めた。小沢事務所では当時、大久保元秘書が公共工事の業者選定で事務所の意向を建設業者に伝える役割だったという。そこで、元社長は建設業界関係者に頼んで紹介を受け、大久保元秘書を訪問したり、料亭で接待したりするようになったという。

 元社長は面会のたびに「お歳暮」「お中元」などとして現金100万円を大久保元秘書に渡して関係づくりをしつつ、ダム工事の幹事会社に選ばれるように陳情を続けた。2004年9月ごろ、大久保元秘書は元社長に幹事会社の選定条件として、本体工事の開札直後に5千万円、材料採取工事の下請け会社の幹事会社に決定した後に5千万円を小沢事務所に謝礼として渡すように伝えたという。

 水谷建設元社長は同年10月6日ごろ、同社で簿外資金を管理していた同社管理本部長に本体工事に絡んで必要だった5千万円の捻出を指示。本部長は宅配便用の茶色の封筒に5千万円を入れて用意し、同社役員が三重県の本社から東京支店に運んだという。

 元社長は同年10月14日、大久保元秘書に連絡を取り、その指示に従って、翌15日に東京都港区赤坂のホテルで大久保元秘書の代理として現れた石川議員に現金5千万円を手渡したという。同社は本体工事では、下請けの幹事会社にはなれなかったが、下請け工事の売上高の約60%を超える受注に成功。岩石採取工事の重機土木工事では、水谷建設が約70%を下請け受注することが決まったため、大久保元秘書に連絡を取った。その指示に従い、05年4月19日に同じホテルで、大久保元秘書に宅配便用の茶色封筒に入れた現金5千万円を手渡したという。この時は、元社長に大久保元秘書を紹介した建設業界関係者も同席したという。

 ■元秘書側 「争点混乱」検察を批判

 「政治資金規正法違反事件の審理を目的としたものとは到底言えない」。大久保元秘書側は冒頭陳述で、検察がこの裁判で水谷建設からの裏金を立証することを批判した。予定されている証人14人のうち、水谷建設関連の証人が半数を占めている点に触れ、この問題の立証を許すことは「本件の争点を混乱させ、審理を遅延させることは明らかだ」と主張した。

東京地裁に入る石川知裕被告=7日午前9時42分、東京・霞が関
 一方、石川議員は公判直前、「なぜ、私まで事件に登場しなければならなかったのか。特捜部が作った『小沢事務所ぐるみ』のストーリーに合わせるためではないか」と語った。

 昨年1月15日の逮捕後、厳しく追及されたのはやはり裏金授受だった。否定し続けたが、検事に「いつでも立証できるんだぞ」と言われた。

 勾留時に記録した「獄中日記」では「検察は事件を作ると言われているが、本当だった」と心情を吐露。水谷建設元社長は特捜部に授受の詳細を語ったとされるが、「根も葉もない。よくもそんな話が作れるものだ」と憤った。

 小沢氏の強制起訴が決まった昨秋以降、「自分のせいだ」と悩んだ。捜査段階で虚偽記載を認め、小沢氏に「相談した」とする調書に署名したためだ。昨年末、再聴取の様子をICレコーダーで録音していたことを弁護団に明かした。記録は初公判の間際に裁判の証拠に採用された。「供述は検事に誘導されたもの」と主張する。

 政治から距離を置く大久保、池田両元秘書と違い、無所属の衆院議員として政治活動を続けている。今年の元日は小沢氏の新年会に3年ぶりに顔を出した。事務所のポスターの「民主党」の文字の上に、「不撓不屈(ふとうふくつ)」と書いた紙を張った。「屈するわけにはいかないから」

 ■小沢弁護団も傍聴

 7日の東京地裁の傍聴席には、強制起訴された小沢氏の弁護団の姿

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