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取調べ可視化、証券監視委、国税当局の調査にも影響

平尾 覚

 特捜事件での取り調べの可視化(録音録画)導入が必至の情勢だ。大阪地検の不祥事を受けた検察改革の一環で、東京地検特捜部は4月から録音録画の試行を始めている。冤罪防止に効果はあるのか、また、録音録画のもとで事実解明はできるのか、と国民の関心は高いが、その影響は、警察捜査を含む刑事司法にとどまらず、特捜部に金融商品取引法違反や脱税事件を告発する証券取引等監視委員会や国税局などの犯則・行政調査にも及ぶ、と今年まで東京地検特捜部に在籍した平尾覚弁護士は指摘する。そのゆえんはーー。

特捜事件の取調べ可視化がもたらすもの

西村あさひ法律事務所
弁護士  平尾 覚

平尾 覚(ひらお・かく)
 1996年、東京大学法学部卒業。司法修習(50期)を経て、1998年から2011年まで検事。この間、2000年から2002年まで人事院長期在外研究員として米国に留学、2005年から2008年まで法務省刑事局付(総務・刑事課担当)、2008年から2010年に福岡地方検察庁久留米支部長、2010年から2011年に東京地方検察庁特別捜査部。2011年から弁護士(第一東京弁護士会)。

 ■ はじめに

 今年4月、法務大臣が検事総長に対し、東京、大阪、名古屋の各地検の特捜部が捜査を行う全事件について取調べの一部可視化を実施し、さらにその中で取調べの全過程の可視化も実施するように、との指示を出した。

 このような法務大臣の指示は、厚生労働省元局長に係る郵便不正事件の無罪判決や元検事による証拠改ざん事件という前代未聞ともいえる事態を背景にしており、その意味では当然の指示であると見る向きも多いと思われる。しかし、そもそも、法務大臣が

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