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課徴金と株主代表訴訟、その危険な連鎖

太田 洋

 独占禁止法や金融商品取引法違反で課徴金処分を受けた企業の取締役らが、違法行為による損害を防げなかったなどとして、株主代表訴訟を起こされるケースが増えている。法令違反があれば、経営判断原則による保護は受けられず、訴えられると、取締役らにとっては相対的に不利な土俵での裁判となる。これは海外で行政制裁金などを課された場合も事情は同じ。太田洋弁護士は、対策として、経営者らが社内で違法行為の端緒を発見した場合、顧問弁護士らと相談し可及的速やかにリニエンシー制度などを利用するための手立てを講じるべき、と説く。

 

課徴金と株主代表訴訟
 ~ 危険な連鎖

西村あさひ法律事務所
弁護士・NY州弁護士 太 田  洋

太田洋弁護士太田 洋(おおた・よう)
 1991年、東京大学法学部卒業、1993年に弁護士登録(司法修習45期)。2000年、ハーバード・ロースクール修了(LL.M.)、2001年に米国NY州弁護士登録。2001年~2002年に法務省民事局付(参事官室商法改正担当)、2007年に経済産業省「新たな自社株式保有スキーム検討会」委員。現在、西村あさひ法律事務所パートナー、日本化薬(株)社外監査役、電気興業(株)社外取締役、金融庁金融税制研究会委員。金融庁コーポレート・ガバナンス連絡会議にも参加。

 ■ はじめに

 最近、自動車部品メーカーを中心に、日本・米国・EUの独占禁止法(独禁法)規制当局によるカルテル行為の摘発事例が相次いでいる。2000年代以降、わが国でも米国などに倣って、独禁法や金融商品取引法(金商法)などに、制裁措置として、従来の刑罰だけでなく、行政罰としての課徴金制度が相次いで盛り込まれ、また、その適用範囲も漸次拡大されてきたが、最近では、課徴金が賦課された上場企業に対して、株主代表訴訟が提起される事例が増加している。

 そこで、本稿では、規制当局による課徴金の賦課と株主代表訴訟による役員への責任追及との関係について考えてみたい。

 ■ 課徴金制度の導入と適用範囲の拡大

 わが国では、伝統的に

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