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従業員らの転職と企業秘密の保護

宍戸 充

 終身雇用制の崩壊に伴う人材の流動化で、企業の重要な財産である技術、営業上の企業秘密が流出するトラブルが増えている。秘密流出は、企業に大きなダメージを与えることもあり、企業秘密の管理は多くの企業にとって喫緊の課題だ。どのような企業秘密が保護されるのか、流出に対する法的な救済手段、その際に注意すべき点を、宍戸充弁護士が詳しく解説する。

 

従業員らの転職と企業秘密の保護

 

西村あさひ法律事務所
弁護士 宍 戸  充

 ■ はじめに

宍戸 充(ししど・みつる)
 1969年横浜国立大学工学部機械工学科卒業。司法修習(33期)を経て、1981年から1990年まで検事、1990年から2008年まで裁判官。その間、東京地裁知財部、東京高裁知財部、知財高裁において知財訴訟を担当。2008年弁護士登録、弁理士登録。日本大学大学院法務研究科教授。

 企業秘密は、ノウ・ハウなどとも呼ばれることがあるが、企業が保有する技術上あるいは営業上の情報は、特許権、実用新案権、意匠権、商標権などとともに企業の重要な知的財産の一つである。例えば、発明をした場合、特許出願することによってその発明を公開し、特許権を取得して独占又は実施許諾(ライセンス)をするという選択肢(いわゆる特許化戦略)もあるが、発明を公開せず、企業内に技術上のノウ・ハウとして秘匿しておくことで技術を独占することにより、競争上の優位性を保つという選択肢(いわゆるブラック・ボックス化戦略)もある。このようなブラック・ボックス化戦略と

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