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従業員の過労死と企業経営者の個人責任

山本 憲光

 大手居酒屋チェーンの従業員の過労死をめぐる損害賠償訴訟で、チェーンの経営会社の役員が会社法の第三者責任規定にもとづき賠償を命じられた。直接、従業員の労務管理にタッチしない大規模企業の役員でも、従業員の健康を守る適切な「内部統制システム構築義務」を怠り、それが悪意又は重大な過失に当たると認定されれば敗訴する。山本憲光弁護士は、取締役の法的地位が以前より格段に厳しいものになっていることを企業経営者は改めて自覚すべきだ、と注意を喚起する。

 

従業員の過労死と企業トップ・取締役の個人責任

 

 

西村あさひ法律事務所
 弁護士 山本 憲光

山本弁護士山本 憲光(やまもと・のりみつ)
 1991年、東京大学法学部卒。司法修習47期。1995年検事任官、東京地検、法務省民事局などを経て、2006年に退官、弁護士登録、西村あさひ法律事務所入所。専門は、一般企業法務、会社関係訴訟、公益法人法制、海事法、企業危機管理(コンプライアンス)、刑事事件等。

 ■はじめに

 長期化する不況の影響で、リストラによる人員削減が、残された従業員の労働条件を過酷なものにしているとの報道がなされることが多い。そのような理由により、不幸にして従業員が過労死してしまった場合、雇用者である会社に、安全配慮義務違反を理由として損害賠償が命じられる事例は現在では珍しいことではない。そして、担当取締役が直接従業員の勤務体制を把握・管理することが可能な中小企業においては

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