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JR西日本福知山線脱線転覆事故無罪判決を分析する

山本 憲光

 多数の死傷者を出したJR西日本の脱線転覆事故で、神戸地裁は業務上過失致死傷罪に問われた同社の前社長に無罪を言い渡した(判決の要旨はこちら)。検察は控訴を断念して無罪が確定。遺族に不満を残したが、企業のリスクをめぐる経営者の法的責任の在り方や今後の事故防止体制構築を考える上で重要な判決だった。山本憲光弁護士が、検察官の主張(検察官の冒頭陳述などはこちらから)と裁判所の判断を対比させながら、裁判のポイントを整理し、判決の意味を解説する。

 

JR西日本福知山線脱線転覆事故無罪判決について

 

西村あさひ法律事務所
 弁護士 山本 憲光

 ■はじめに

山本弁護士山本 憲光(やまもと・のりみつ)
 1991年、東京大学法学部卒。司法修習47期。1995年検事任官、東京地検、法務省民事局などを経て、2006年に退官、弁護士登録、西村あさひ法律事務所入所。専門は、一般企業法務、会社関係訴訟、公益法人法制、海事法、企業危機管理(コンプライアンス)、刑事事件等。

 去る1月11日、神戸地裁は、乗客106人と運転士が死亡し、乗客493名が傷害を負ったJR西日本福知山線脱線転覆事故で、必要な安全対策(現場カーブにおけるATS設置)を怠ったとして業務上過失致死傷罪に問われた前JR西日本社長に対し、無罪判決を言い渡した。前社長を起訴した神戸地検は

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