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国境を越える海外当局 日本の司法制度に与えるインパクト

平尾 覚

 ボーダーレス時代。日本企業が国際カルテルや外国の役人に対する贈賄容疑で欧米当局の捜査、調査を受けることも珍しくなくなった。その際に日本企業をとまどわせるのが、欧米、特に米国の取引的な司法制度だ。これを十分理解していないと、痛い目に遭う恐れがある。平尾覚弁護士が、米国の海外腐敗行為防止法を例に、日米の刑事司法の違いや日本の刑事司法の課題について論じる。

国境を越える海外当局
日本の司法制度に与えるインパクト

西村あさひ法律事務所
弁護士  平尾  覚

 ■はじめに

平尾 覚(ひらお・かく)
 1996年、東京大学法学部卒業。司法修習(50期)を経て、1998年から2011年まで検事。この間、2000年から2002年まで人事院長期在外研究員として米国に留学、2005年から2008年まで法務省刑事局付(総務・刑事課担当)、2008年から2010年に福岡地方検察庁久留米支部長、2010年から2011年に東京地方検察庁特別捜査部。2011年から弁護士(第一東京弁護士会)。

 現在、日本企業は、我が国の規制当局や捜査当局だけではなく、米国をはじめとする外国当局の捜査や調査の対象となり得るリスクを抱えている。

 特に、国際カルテル事案においては、米国の司法省や欧州委員会(EC)が現在も積極的にカルテルの摘発を行い、その捜査・調査の対象には日本企業も含まれているし、米国司法省は、海外腐敗行為防止法(Foreign Corrupt Practices Act(FCPA))違反の罪で米国のみならず日本企業を含めた外国企業に対しても捜査の手を伸ばしている。

 企業活動がボーダレスとなっていることにかんがみると

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