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不正競争防止法における営業秘密の使用とは何か?

 「産業スパイ」の摘発や損害回復の根拠となる不正競争防止法。不正競争防止法では、企業などが営業秘密を不正に侵害された場合、侵害者に対して、当該営業秘密の「使用」の差止めを請求できるが、それには、不正に取得された営業秘密の「使用」の事実の立証が必要だ。ここでは、3月末まで西村あさひ法律事務所に在籍した西貝吉晃元弁護士が、営業秘密の「使用」をめぐる学説の見解や内外の裁判例を紹介しながら、「使用」の具体的な適用基準を考える。

営業秘密侵害の差止訴訟における「使用」の内容を考える

 

元西村あさひ法律事務所弁護士
西貝吉晃

西貝 吉晃(にしがい・よしあき)
 2004年東京大学工学部卒業。2006年東京大学大学院情報理工学系研究科修了(修士(情報理工学))。同年東京大学大学院情報学環学際情報学府コンテンツ創造科学産学連携教育プログラム修了。2009年東京大学法科大学院修了。情報・システム研究機構国立情報学研究所特任研究員を経て、2011年弁護士登録。2012年から約1年間、西村あさひ法律事務所勤務。2013年3月末に弁護士登録を抹消し、2013年4月から東京大学大学院法学政治学研究科助教。

 ■ はじめに

 新日鐵住金株式会社が株式會社ポスコを相手取って営業秘密侵害訴訟を提起したことは、記憶に新しい。企業の事業活動における努力の結晶ともいえる技術的なノウハウや顧客情報等の情報が漏洩してしまい、それゆえに、当該企業が得られるべき利益を他者に奪取された形となることをむざむざと見逃すことができないのは当然である。これからも、同様の訴訟が増加することになるのは必定といえるであろう。

 旧来は、企業の保有する秘密は

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