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子どもを殺すだけでなく、社会も壊す虐待

大久保真紀

大久保真紀 朝日新聞編集委員(社会担当)

 いったい何人の子どもが死ねば、あるいは、どれほど悲惨な状況で亡くなれば、本当に物事が動いていくのでしょうか。

 児童虐待防止法が2000年に議員立法で制定され、虐待に対する社会の認知が進んだことは間違いありません。相談・通報が増える中、児童相談所だけでなく市町村ネットワークなど関係機関の連携も進み、「臨検・捜索」といった親に対する強制的な介入の枠組みができたことも成果といえます。しかし、実際には虐待で亡くなる子どもは心中を除いて年間60人前後で減っておらず、悲惨な事件が後を絶ちません。

 私は10年以上も前から、この問題に取り組み、取材をしてきました。児童相談所の対応の悪さ、職員の専門性の低さ、専門職採用ではない職員体制の問題を指摘し、虐待が疑われる子どもたちを一時保護するための権限の強化や司法関与についても外国の取り組みなどを紹介しながら、問題点を指摘してきました。児童相談所など現場の方々は努力を重ね、以前に比べるとレベルは上がってきたといえます。しかし、基本的には、10年後のいまも子ども虐待に対応していくために必要だと思うことの内容はほとんど変わりがありません。

 選挙権のない、そして、代弁者になる親のいない子どもたちを社会が受け止める覚悟とそれに伴う親権など根本的な制度の改革、そして社会的な投資が絶対的に足りないのです。

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