メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

対策をコスト、と考えるのではなく

伊藤智章

伊藤智章

 厚生労働省によると、自殺やうつ病による経済的損失は単年度で2兆7千億円にのぼる、という。自殺やうつ病を無くせば、国内総生産(GDP)が1兆7千億円引き上げられるそうだ。

 これは自殺対策、うつ病対策を促進するための試算だ。でも人の命をカネではかる発想には嫌悪感が先に立ってしまう。意地悪くいえば、こんなにも失われるカネは惜しいから人を生かそう、という趣旨なら、損失が少なければ死なせてもいいのか、ということにならないだろうか。

 みもふたもない意見と承知して言えば、精神医薬産業の今日の隆盛はどうなるだろう。今回の試算でも「うつ病患者がなくなることによる医療費の減少は2971億円」とあった。逆に言えば、自殺者やうつ患者の存在は、医薬の業界にはカネの問題だけでいえばプラス、と言えなくもないではないか。その分を差し引いても人を生かした方が得、という子細な計算もできるだろうが、どんどん訴える力が弱っていく。

・・・ログインして読む
(残り:約942文字/本文:約1344文字)