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電子新聞が抱えるジレンマ

川本裕司

川本裕司 朝日新聞記者

 「ネット時代の言論報道と新聞経営の在り方についてひとつの道筋を示した。他社に先駆けて有料電子版モデルを提示し、新しい新聞の形を実現した」。日本経済新聞の電子版が今年度の新聞協会賞(経営・業務部門)に選ばれた授賞理由には、デジタル分野のビジネスモデルを模索する新聞界の願望あるいは希望が行間から感じられる。

 今年3月23日に創刊された日経電子版は、紙面イメージをパソコンで見せる従来の電子新聞ではなく、契約者が登録した関心分野や読んだ記事をもとにお薦め記事を自動的に選ぶ機能や過去5年間分の記事検索も備える本格的なサービスを盛り込んだ。

 8月30日に登録会員が50万人を超え、このうち有料会員が7万人台に乗っている。有料会員数は「1年間で10万人」という予想を上回るペースだ。社内からは「年内にも10万人突破だ」という景気のいい見通しが出ている。

 新聞社がこれまでつかんでいなかった読者の特性について、日経IDを取得する際に氏名や年齢、働いている企業の職種、年収などを登録してもらうことで把握することを可能にした。

 こうした読者データに基づき、「部長以上に向けた広告」といったターゲットを絞り込んだ電子版独自の広告を、今後、日経は積極的に展開する方針だ。

 しかし、日経関係者によると、広告収入を含めて電子版の収入は1年間で約40億円と見込まれ、10億円程度の赤字が出そうだという。ただ、電子版の開発に日経は70億~80億円を投じている。開発費を回収するのには長期間かかるの間違いない。

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