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挫折感が拡大する30代の派遣社員

三浦展

三浦展 三浦展(消費社会研究家、マーケティングアナリスト)

 アキバ事件の容疑者加藤智大は、ちょうど就職氷河期世代、いわゆるロストジェネレーションであったこともあり、マスコミは、派遣社員という不安定な立場がこうした事件の背景にあると分析してきた。事件直後の私の第一印象も、また派遣社員が事件を起こしたかというものだった。同じ年に江東区のマンションで派遣社員の男性が隣室の女性を殺害し、トイレに流すという恐ろしい事件が起きていたからである。

 たしかに、派遣社員は正社員よりも年収が少ない。30歳を過ぎると年収の伸びもあまり期待できず、長期雇用の保障もなく、将来に展望を持ちにくい雇用形態である。

 そもそも派遣社員の待遇はどれほど悪いのか。私が行った全国の1万人の男性を対象に行った「男性仕事・生活調査」(2006年)によって20代前半から40代前半までの年収の推移を見ると、派遣社員は20代前半では150万円~300万円未満が4割であり、正社員とあまり違わない。しかしその後は300万円以上500万円未満でほぼ頭打ちであり、40代になっても年収は増えない。それに比べると、正社員は40代になると500万円以上が7割に近づく。管理職になれば56%が700万円以上になる。こうしたことから、派遣社員は30代になると正社員との差を確実に実感すると言えるだろう。25歳を過ぎた時点で将来が見えてくると、より強く格差を実感するかもしれない。

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