メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

世界商品としてのサッカーとメディアビジネス

速水健朗

速水健朗 速水健朗(フリーランスライター・編集者)

12月2日に投票が行われ、2018、2022年のサッカーW杯の開催国が決まる。2018年は、ヨーロッパの立候補国の中から選ばれることが決定。2022年は、日本を含むアジア、2022年はアジア・オーストラリア(FIFAの区分ではアジア)及び、アメリカから選ばれそうだ。だが残念ながら日本開催の可能性は薄い。その理由を、世界及び日本のメディアやコンテンツ市場の状況に沿った話として書いてみたい。

 現状、サッカーは世界中からお金を集めることのできるコンテンツとして、ハリウッド映画やディズニーキャラクターに匹敵する存在になっている。特に90年代初頭にオーストラリアのメディア王マードック率いるBスカイBが、当時のイングランドの一部リーグの全チームを買収し、新しくプレミアリーグとして設立して以降、サッカーは放映権料を巡る国境を越えた巨大メディアビジネスとなった。いまでは世界的有名クラブは全世界にファンを持ち、オフシーズンにはアジアや中東などに遠征という名の巡業ツアーに出る。これは、ここ10数年で完全に定着した年中行事である。

 また、欧州の有名リーグでは、土曜日のお昼に試合を行うランチタイムキックオフも導入されている。これは、東アジアのゴールデンタイムに試合を行うという、アジア市場を考慮に入れた戦略と言われている。世界同時不況以後の世界において、各国リーグのチームの経済状況や観客動員に陰りが見えてきていると言われる。だが、世界全体を市場として見れば、サッカーマーケットは拡大の一途を突き進んでいる。中流階級が勃興しつつある新興国は次々と登場しており、開拓先はまだまだ尽きはしない。

・・・ログインして読む
(残り:約2235文字/本文:約2926文字)