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選手層の薄さと戦略不足でメダル惨敗

松瀬学

松瀬学 ノンフィクションライター

広州アジア大会が閉幕した。金メダルの数でいえば、日本は惨敗した。目標数を「60個」に置きながら、3番目の48個にとどまったからである。前回大会より50種目以上増えながら、前回の50個をも下回ったのだ。

 金メダル数の1位が地元中国で199個、2位が次回の仁川大会の開催地の韓国で76個だった。中国はともかく、韓国に大きく水をあけられたのが、日本オリンピック委員会(JOC)幹部にはショックだっただろう。

 ちなみに五輪実施競技だけでは、中国が125個、韓国41個、日本36個となる。注目すべきは五輪競技の銀メダル数で、韓国が26個、日本は53個だった。つまりは韓国と比べ、日本選手は決勝で弱いのである。

 なぜだろう。日本選手団の上村春樹副団長は「最後は精神力の差。自信があるかどうかだ」と言った。この場合の自信とは、練習の質量、国際経験から培われるものである。

 さらに言えば、日本の派遣選手のレベルがマチマチだったこともある。軸足を「世界」におく、アジア大会軽視の競技団体もある。韓国は一線級をそろえたけれど、日本は女子バレーボール、体操などは次点者で臨んだ。

 これはJOCの指導力不足ゆえである。「チームジャパン」としてメダル獲得の戦略が見えない。選手層の薄さもあるが、二番手で勝てるほど、もはやアジア大会は甘くない。

 歴史をみれば、日本は金メダル数で1951年の第一回ニューデリー大会から78年の第八回バンコク大会まで首位だったけれど、82年の第九回ニューデリー大会で中国に逆転されて2位に落ち、86年ソウル大会では韓国にも抜かれて3位となった。五輪の金メダル数をみても、08年北京五輪では、ついに世界一となった中国が51個、7位の韓国が13個、8位の日本は9個だった。

 ただ、である。確かに金メダル数は国のスポーツ力の指標のひとつである。でも団体競技と個人競技を等しくカウントしてもいいものか、という疑問がずっとある。例えば、日本は広州アジア大会で男女サッカー、男子バレーボール、男子ラグビーで金メダルをとった。締めて4つ。一方、射撃だけで、中国が21個、韓国は13個も獲っている。

 率直に言えば、日本の競技力は全体として上がっていると思う。根拠はチーム競技の躍進である。金メダルの競技の広がりである。どこぞの国みたいに、強化にカネと時間がかかるチーム競技を捨て、国家主導で種目数の多い未成熟な個人種目だけの強化に躍起になるのはどうかと思うのだ。

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