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好素材多くても見えない世界への道筋~大学・高校ラグビー

松瀬学

松瀬学 ノンフィクションライター

ラグビーの全国大学選手権は帝京大が早大を下し2連覇を達成し、全国高校大会では東福岡(福岡)と桐蔭学園(神奈川)が両校優勝となった。いずれも最後は強力FWと接点の強さを生かして頂点に上り詰めた。この世代は日本で開催される二〇一九年ワールドカップ(W杯)の主力となる。勝利がすべて、『世界』に向けたメッセージ性が見えない戦いぶりに一抹の寂しさが残る。

 「どうやって勝つかも大事ですけど、チャンピオンシップは勝者になることが一番大事なのだと思います」。帝京大の岩出雅之監督はそう、言い切った。確かにそうだ。優勝して部員全員で感激する。それが学生にとって、何よりも優先するのだ。「最高の舞台で最高の相手に勝ててうれしい。これでチームの礎が固まった。さらに強さを積み上げていきたい」

 帝京大は対抗戦で攻撃重視の試行錯誤を繰り返して、4位に沈んだ。ここで軌道修正する。ボールをどんどん動かす展開勝負を避け、ディフェンス重視、ふたりの外国人留学生を軸とした強力FWを前面においたパワー勝負に持ち込むことにした。これで関東学院大、慶大、東海大をねじ伏せていく。

 強みがスクラムとブレイクダウン(タックル後のボール争奪戦)。決勝の早大戦では猛タックルとFW戦で優位に立ち、スローなテンポに徹した。早大の多彩な展開勝負を封じ込めた。激しい接点の攻防は見応えがあったが、欲をいえば、帝京大にももっとボールを広く早く動かしてほしかった。

 日本が世界と戦う場合、アップテンポとスピードが不可欠である。細かい技術を生かした戦術面の創意工夫も必要だろう。FW勝負に徹した帝京大も、個人技に頼りすぎた早大も、そういった意味でのメッセージ性は乏しかった。

 さらにいえば、大学ラグビーの『東高西低』、スポーツ推薦による好素材偏重の傾向がより強くなっている。また今季、忘れてならないのは明大の復活と同志社大の凋落である。

 高校に目を転じれば、東福岡の強さが際立っていた。ラグビーに限らず、高校では強い学校に好素材がより集まっていく。高校日本代表は東福岡が九人、桐蔭学園は五人。

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