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震災情報でのメディア・企業・市民の連携

川本裕司

川本裕司 朝日新聞記者

 東日本大震災に関するインターネット上の情報掲載で目立つのは、企業同士、企業と市民といったさまざまな連携だ。

 関係者からの注目を集めているのは、グーグルの災害情報ページ「クライシスレスポンス」だ。このページには外部からの情報提供を生かした複数のサービスが展開されている。

 地震発生当日の11日に立ち上げた、安否確認のための「パーソンファインダー」は、名前を打ち込んだり登録したりして行方不明者らの消息を検索する仕組みだ。NHKや朝日新聞社、警察庁、福島県などが安否情報を提供している。米国で05年にあったハリケーン「カトリーナ」での安否確認の経験をもとに、10年のハイチ地震で開発され、このとき登録されたのは5万5000件だった。国内で初めてこの仕組みが利用された東日本大震災では25日現在、49万8500件が登録されている。

 14日から始まった「避難所名簿共有サービス」には、グーグルにメール送信された、避難所に張り出された名簿の写真が9000枚以上掲載されている。ネット上で検索できるように、写真にある名前をテキストデータとして打ち込む作業を、グーグル社員だけでなく、これまでに4600人のボランティアの協力を得ながら進めている。入力されたデータはパーソンファインダーにも登録される。

 被災地周辺の道路を通れるかどうかを示す「自動車・通行実績情報マップ」は14日から始められた。ホンダから提供されたデータを地図に落とし込んでいる。ホンダ車に搭載されたカーナビからホンダのサーバーへ自動的に送られる通行情報をもとに、前日の0~24時に走行記録があった道路が青色、なかった道路が灰色で表示される。ホンダでは「救援車両などで役立つのでは」と話す。

 住所や収容人数などを掲載した「避難所情報」では、地方自治体やNGOのほか、毎日新聞社からも情報提供を受けている。

 放送と通信の垣根を一気に超える動きも起こった。

 NHKは11日午後7時からネット動画サイト「ニコニコ動画」に、11日午後9時半からネット生中継サービス「ユーストリーム」にそれぞれNHK総合テレビとNHKワールドの生放送を許諾した。13日からはネット映像サイト「GyaO!」でも生放送が認められた。

 受信料を財源とするNHKは、放送法で事業をテレビやラジオの放送に原則として規定されている。ネットのサービスについては、総務大臣の認可を受ける「インターネット実施基準」で定められているが、今回は「災害・危機管理情報、選挙情報、外国人向け情報の提供については、必要に応じ、積極的に実施する」との規定に該当するとして踏み切られた。NHKでは、テレビを見られない被災者がパソコンなどで番組を視聴できる可能性を重視し、総務省の判断を仰いだうえで判断した、という。

 災害時に頼りになるラジオでは、関東・関西の民放13局のラジオ番組をネットで同時配信する「ラジコ」が、13日午後5時から関東、近畿地方に限定されていた地域制限を外し、当面の間、全国での聴取が可能になった。

 また、ソーシャルコミュニティーサービスの企画・開発会社ガイアックスによると、ネット上で節電や買いだめ抑制を呼びかける自然発生的な動きが相次いだのも今回の特徴となっている。

 アニメ「新世紀エヴァンゲリオン」で敵を倒すための兵器に必要な電力を供給するため停電させたことに由来する「ヤシマ作戦」や、「どうぞどうぞ」と譲り合うギャグで知られるダチョウ倶楽部の上島竜兵さんから取ったという「ウエシマ作戦」など、肩の力を抜きながら幅広く協力していく姿勢が打ち出されている。草の根の知らない者同士がネット上で手を結んだ運動といえる。

 ITジャーナリストの林信行さんは「ボランティアがテキスト化を手伝ったグーグルのパーソンファインダーやホンダと連帯した自動車運行情報マップなど、ネット上での即応が目に付いた。ユーストリームで番組を見れば節電にもつながるのではないか」と話す。

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