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若者が住みたくなる街に、霞が関も移転を

三浦展

三浦展 三浦展(消費社会研究家、マーケティングアナリスト)

東北地方は震災前の形に戻すだけでは復興したとは言えない。高台に新都市を築いたとしても、まだ不十分である。むしろもっと人口を増やす、特に若い世代の人口を増やすくらいの政策を打つべきだ。

 なぜなら東北地方は長期的、慢性的に若い人口が不足しているからである。2000年の国勢調査によると、東京都の総人口に占める39歳以下の人口は48%。だが岩手県は41%、郡部に限ると39%。宮城県も全体では46%だが、郡部では42%である。65歳以上だと、東京都は18%だが、岩手県は25%、うち郡部は26%、宮城県は20%、うち郡部は23%である。

 こうした人口構成を考えると、やや冷酷な言い方だが、東北地方の中でもすでにかなり高齢化している地域に対して巨額の投資をする意味があるのかという疑問が浮かぶ。また高齢者ほど、慣れ親しんだ地域にそのまま住みたいと思う人が多いことを考えると、それらの地域は、あまり劇的に開発をするよりは、防災機能を高めつつ、最低限の住宅などを建てて、できるだけ従前と同じ近隣住民とともに過ごせるようにすることが求められるだろう。

 高齢者が多く住んでいるのだから、さまざまなサービスが必要であり、今後さらに必要は増していく。そうしたサービスを従事する若い世代をたくさん雇い、できるだけ近くに住んでもらえるようにすればよい。

 他方、すでに比較的都市化が進んでいて、若い世代も多く住んでいた地域では、ある程度大胆な開発が可能だろう。高台に新都市を建設し、そこに若い世代が比較的多く住むという施策が受け入れられやすいかもしれない。

 だが、若い世代でも地元住民のつながりを重視する傾向は近年強まっていると思われるので、単に従来型の高層住宅を建てればいいというものではない。むしろ、隣近所の付き合いが自然に生まれやすい、中層集合住宅と戸建て住宅がミックスし、かつ住居と商店などの諸機能が混在した街を計画的につくりだすことが望まれる。これは私が近年アメリカのニューアーバニズムを引用しながら主張してきたことである。

 またアメリカの物まねか、と思われるかもしれないが、私は物まねを勧めているのではない。そもそも日本の地方の中心市街地というものは、ニューアーバニズムが理想とするようなものだった。それを、過去二、三十年の間に、郊外の農地をつぶして住宅地をつくり、職住を分離し、クルマがないと暮らせない地域構造に変えてきてしまった。それが、エネルギーを浪費し、CO2を増やすライフスタイルを生み出し、コミュニティを弱体化させたのだ。アメリカではいち早くそうした地域構造の問題が現れたので、その問題を解決すべく、ニューアーバニズムのような新しい考え方も早く生まれたのである。私としては、震災を機に、本来の日本の市街地の良さを再認識しながら、新しい時代にふさわしい都市が造られることを私は期待する。

 そしてここでも重要なのは、その新都市に従来から東北に住んでいた人に限らず、東京からも他の地域からも若い世代が移住してくることだと私は考える。従来からあった雇用が回復されるだけでなく、

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