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【ポスト・デジタル革命の才人たち】 高城剛さんに聞く 「ウェブの未来」――(4)ラテン系の方が人間的だ!

聞き手:服部桂・朝日新聞ジャーナリスト学校主任研究員

◆スペインは経済的に破綻しても文化的に生き残る◆

――日本が今回の大震災を「災い転じて福となす」には、これまでのライフスタイルを変えるきっかけにするしかないですね。

高城 やってみてもしダメだったら元に戻せばいい。とにかくやってみることが大事です。ドロップアウトこそが実は未来につながる道で、エリート的存在は幻想でしかなかった。東電にも霞が関にも、築地のこの会社(朝日新聞社)にもいっぱいいると思いますが(笑い)、頭がいいエリートに任せて社会の仕組みを構築しても結局うまくいかない。勉強ができることと社会をうまく回すことは全然別のことだからです。東電の人たちは超エリートだと思いますが、その能力は実はほとんど役に立たなかった。今回よく分かったのはそういうことではないでしょうか。

――高城さんのバルセロナでの暮らしは具体的にどんな感じなんですか。バルセロナのいいところって何でしょうか。

高城 世界中、色々な土地を回っていますが基本はバルセロナです。圧倒的にいいところだと思うのは、スペインは国自体つぶれそうな状況なのに、スペイン人がみんなめちゃくちゃ明るいことです。20代の失業率が50%近くて、とんでもない経済状況ですが、お金と人生の楽しさは比例しない。当たり前の話ですが、お金持ちが幸せかというと全くそんなことはない。日本ではお金持ちが偉いという風潮がありますがスペインにはありません。

――ラテン系の人たちと俺たち日本人は違う。あるいはバルセロナはスペインの他の地域とは少し違う、と突っ込む人がいるかもしれません。

高城 でも、ラテン系の方が人間的じゃないでしょうか。もちろんバルセロナはカタルーニャ地方という独自の文化圏です。バスク地方とかカタルーニャのようなインターゾーン(境界領域)では可能であっても、保守本流の首都である東京ではうまくいかない面もある。だから東京を出るしかない。「出る杭」を評価しないと社会や経済は回らない、というのは米国でも欧州でも常識で、日本のような出る杭が叩かれるガラパゴスメンタリティは日本的システムと地続きです。そうした文化は100年単位じゃないと変化しない。だからこの国は衰退します。でも、スペインは経済的に破綻しても文化的に生き残るでしょう。

――日本はブータンのように禁欲的で幸せな生き方を目指すのがいいのでしょうか。

高城 ブータンは極端すぎると思いますよ。屋外の広告は禁止だし、プラスチックやビニールバッグを持ち歩くのも禁止。他にも色々なルールがある国ですが、あれと同じような生き方は日本では難しい。でも、ニューヨークのウォール街に象徴されるような中央集権システムが遅かれ早かれ、世界的に破綻するのは間違いない。東京もニューヨークもパリもロンドンも、その国の他の地域とは別個に存在する都市国家のようなものですが、僕は、そうした中央集権的な都市とは違ういわゆる「クリエイティブ・シティ」、つまりバルセロナとかベルリンにここ数年、住むようにしてきました。でもニューヨークや東京が衰退する余波で、そうした都市も今後はやばくなるんじゃないかと思っていて、さらに周辺地域に行くようになりました。豪州のバイロンベイという町だったり日本の西表島だったり。これからも世界中でどこか居場所を見つけて暮らすと思います。

◆9・11までの僕は物欲番長だった◆

――西表島の話を詳しく伺いたいのですが。

高城 2006年に東京の青山などに持っていた不動産を全部売り払って、西表に小さい不動産を買いました。とても風光明媚な場所なのですが、そこで風力発電所を始めました。でも先ほども言ったように、そうした決断にちゃんとした理由はなくて、とにかくこれからはこういう方向を目指すべきだと思ったとしか言いようがない。

2001年当時の高城剛さん

 というのも2001年の9・11が人生の転機の一つでした。

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