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タンス預金か海外逃避か

後藤正治

後藤正治 後藤正治(ノンフィクション作家)

同世代の旧友たちと会食した。一人は近々会社勤めから退く予定で、「ごくろうさん会」でもあった。ハッピーリタイアであるようで、結構なことであるが、退職金をどうすべきか、という話となった。一同首をひねったまま妙案は出なかったが、話題としては盛り上がった。老後の不安を抱える同世代の共通テーマであるからだろう。

 かつてなら定期預金にしておけばいいということで済んだのであろうが、いまや超低金利時代、加えて株も不動産市場も冷え切っている。海外の高利回りの投資信託はあるが、元金の保証はないし、円安が続く現在、これとてある種のバクチであろう。

 賢い資産運用をするには、常々、この方面に関心をもって情報収集を怠らぬこと、加えて才覚が求められよう。見渡して、双方とも乏しいと思える連中であった。私など、まるでダメである。これまで株を買ったことはあるが、儲かったことは一度もない。確か、はじめて株を購入した折り、直後にブラックマンデーに遭遇したはずだ。各自の失敗談が披露されると座は盛り上がった。まぁ酒席の話題に供した思えば愚行もまた以って瞑すべしというべきか。

 昨今、金が人気を呼んでいるとか。カネというものは増やしてくれそうなところへのみ流れていく。いまや行き場を失ったカネが金市場へと流入しているのだろう。金相場はいまが天井ともいうがどうなのか。金塊を買ったとして自宅のどこに置いておくんだ――という声があって、

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